塩化ストロンチウム

塩化ストロンチウム：性質、用途、そして取り扱い上の注意

塩化ストロンチウムは、ストロンチウムイオンと塩化物イオンから構成されるイオン結合性化合物です。化学式はSrCl₂で表され、無色結晶として存在します。水への溶解度が非常に高く、エチレングリコールやエタノールにも溶ける性質を持ちます。

特徴的な性質として、明るい赤色の炎色反応を示す点が挙げられます。これは、ストロンチウムイオンが特有の波長の光を放出するためです。この性質は、花火の着色剤として利用されています。

結晶構造は、無水物では蛍石型構造をとり、格子定数は0.69767nmです。さらに、一水和物、二水和物、六水和物といった水和物が存在し、いずれも潮解性、つまり空気中の水分を吸収して溶ける性質を示します。六水和物は室温で安定な結晶です。加熱によって脱水し、温度に応じて異なる水和物へと変化します。

化学的性質と反応

塩化[ストロンチウム]]は、典型的なイオン性金属塩としての性質を示し、他のストロンチウム化合物の合成において重要な役割を果たします。例えば、クロム酸ストロンチウム]の合成には、塩化[[ストロンチウム水溶液とクロム酸ナトリウム水溶液を反応させる方法が用いられます。この反応は、難溶性のクロム酸ストロンチウムの沈殿生成によって進行します。


SrCl₂(aq) + Na₂CrO₄(aq) → SrCrO₄(s) + 2NaCl(aq)


水溶液はほぼ中性です。

合成方法

塩化ストロンチウムは、ストロンチウムを含む化合物と塩酸を反応させることで合成できます。水酸化ストロンチウムSr(OH)₂や炭酸ストロンチウムSrCO₃を塩酸HClと反応させると、塩化ストロンチウム水溶液が生成します。


Sr(OH)₂(aq) + 2HCl(aq) → SrCl₂(aq) + 2H₂O



SrCO₃(s) + 2HCl(aq) → SrCl₂(aq) + CO₂(g) + H₂O


また、ストロンチウムの単体と塩素の単体を直接反応させる方法や、炭酸ストロンチウムと塩化カルシウムを混合して溶融後、水で抽出して濃縮する方法も工業的に用いられています。

用途

塩化ストロンチウムは、それ自体が大量に用いられる用途は多くありませんが、他のストロンチウム化合物の合成原料として広く利用されています。

硫酸ストロンチウムの難溶性を利用して、硫酸イオンの検出試薬として用いられることもあります。ただし、硫酸バリウムよりも溶解度が高いため、検出限界は低いという特徴があります。


SrCl₂(aq) + SO₄²⁻(aq) → SrSO₄(s) + 2Cl⁻(aq)


主な用途としては、花火の赤色着色剤、ガラス製造、冶金、そして一部の歯磨き粉への添加剤として挙げられます。ホメオパシーでも用いられています。さらに、骨がん治療に用いられる放射性同位体⁸⁹Srは、通常⁸⁹SrCl₂として投与されます。また、水族館では、特定のプランクトンの外骨格形成に必要なストロンチウムイオンを補給するために、海水に微量添加されることがあります。

安全性

塩化バリウムよりは毒性が低いものの、塩化ストロンチウムも取り扱いには注意が必要です。人体への影響を考慮し、適切な取り扱いと保管が必要です。

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