ダウンバースト

ダウンバースト

ダウンバースト（downburst）とは、気象現象の一つで、特に強い下降気流が地面に衝突した際に周囲に放射状に広がる風のことを指します。この風は、時には最大風速が50mを超えることもあり、非常に危険な気象条件とされています。特に、航空機にとって深刻な影響を及ぼすため、注意が必要です。

発見の歴史

ダウンバーストという用語は、当初は「downdraft outburst」と呼ばれていました。この名称は気象学者藤田哲也が1975年にシカゴ大学で行った、イースタン航空66便の着陸失敗事故の調査から生まれました。この調査において、藤田は積乱雲からの下降気流が従来の認識とは異なることを発見し、新たな名称を付けました。

現象の詳細

通常、積雲や積乱雲は強い上昇気流によって形成されますが、これらの雲が減衰期に入ると、降水粒子が空気に摩擦を引き起こして強い下降気流が発生します。このとき、特に強い下降気流こそがダウンバーストとして認識されます。ダウンバーストは、地面に降りた風が周囲に広がることで、さまざまな災害を引き起こす可能性があります。

ダウンバーストには、規模によって「マイクロバースト」と「マクロバースト」があります。マイクロバーストは広がりが4km未満で、通常風速が非常に強い現象です。対照的に、マクロバーストはこれよりも広い範囲で発生するもので、通常は風速が弱い傾向にあります。

ドップラーレーダーを使用してダウンバーストを観測する際、風速の変化を測定し、風速差が10m/s以上であることを基準にしています。特にマイクロバーストは、風速差が4km未満のものとして観測されることが多いです。

ダウンバーストの発生メカニズム

ダウンバーストの発生には主に二つの要因があります。一つは、積乱雲内部で多くの水滴が落下することで空気が押し下げられることです。この落下する水滴は、周囲の空気を一緒に押し下げるため、結果として強い下降気流を作り出します。

もう一つの要因は、冷却による大気の性質変化です。降下中の氷粒や雨滴は、周辺の空気から熱を奪い、密度を高めるため、この結果空気が強く下降することになります。特に、ダウンバーストが発生する前にはメソスケールの小高気圧ができ、その冷却により密度が増し、空気が地表に向けて放出されるのです。

被害と影響

ダウンバーストによる被害は日本でも多く報告されており、特にアメリカでは深刻な問題となっています。研究によれば、雷雨のある時には約60～70%の確率でダウンバーストが発生するとされています。また、ダウンバーストの強さや発生条件によっては、特定の地域での乾燥した空気層が影響を与えることもあり、これが農地における土壌流出を引き起こすことにもつながります。

航空機への影響

航空機にとって、ダウンバーストは非常に危険な現象です。特に離着陸する際、ダウンバーストによる強い下降流が機体を地面に引き寄せる結果、失速や墜落の危険性があります。1970年代から80年代には、アメリカ合衆国でダウンバーストが原因となる航空事故が多発し、その対策が急務とされていました。

現在では、空港に気象用のドップラー・レーダーを設置し、ダウンバーストの発生を予測する研究が進められています。また、新しい航空機ではウインドシアを感知し、自動的に回避するシステムが実装されてきています。しかし、ダウンバーストは依然として航空機にとって重大なリスクであるため、常に注意が求められます。

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