ダウン・イン・ザ・グルーヴ

ボブ・ディラン『ダウン・イン・ザ・グルーヴ』



1988年にリリースされたボブ・ディランの25枚目のスタジオ・アルバム『ダウン・イン・ザ・グルーヴ』は、彼のキャリアの中でも特に評価の分かれる作品として知られています。このアルバムは、ディランの音楽活動におけるスランプ期に制作されたとされ、商業的な成功も批評的な評価も振るいませんでした。ビルボード200チャートでは最高61位、全英アルバムチャートでは32位と、過去の作品と比較して著しく低い順位に留まりました。

低迷した評価とセールス



音楽雑誌『ローリング・ストーン』誌は、このアルバムを「偉大なバンド・アーティストのワースト・アルバム15枚」の一つに選出し、その評価の低さを象徴する出来事となりました。しかし、その一方で、このアルバムには、後のディランの音楽性を探求する上で重要な要素が含まれているという意見もあります。

特徴的なバックボーカルの変化



それまで、ディランの楽曲では女性バックアップ・シンガーがしばしば起用されていましたが、このアルバムを最後に、その傾向は薄れていきます。これは、ディランの音楽的な変化を語る上で、重要なポイントの一つとされています。

豪華な参加ミュージシャン



アルバムには、グレイトフル・デッドのロバート・ハンターが「アグリエスト・ガール」と「シルヴィオ」の共作者として参加し、ジェリー・ガルシアをはじめとするグレイトフル・デッドのメンバーもレコーディングに参加しています。また、エリック・クラプトン、マーク・ノップラーなど、豪華なミュージシャンが多数参加しており、多様な音楽性を感じさせる作品となっています。

収録曲について



アルバムには、カバー曲とオリジナル曲が混在しています。

1. レッツ・スティック・トゥゲザー (Let's Stick Together)：ウィルバート・ハリスンのカバー。
2. ホェン・ディド・ユー・リーヴ (When Did You Leave Heaven?)：ウォルター・ブロックとリチャード・ホワイティングのカバー。
3. サリー・スー・ブラウン (Sally Sue Brown)：アーサー・ジューン・アレクサンダー、アール・モンゴメリー、トム・スタッフォードのカバー。
4. デス・イズ・ノット・ジ・エンド (Death Is Not the End)：ディランのオリジナル曲。
5. ハド・ア・ドリーム・アバウト・ユー (Had a Dream About You, Baby)：ディランのオリジナル曲。
6. アグリエスト・ガール (Ugliest Girl in the World)：ディランとロバート・ハンターの共作。
7. シルヴィオ (Silvio)：ディランとハンターの共作。
8. ナインティ・マイルズ・アン・アワー (Ninety Miles an Hour (Down a Dead End Street))：ハル・ブレアとダン・ロバートソンのカバー。
9. シェナンドゥ (Shenandoah)：トラディショナル曲でディランが編曲。
10. ランク・ストレンジャー・トゥ・ミー (Rank Strangers to Me)：アルバート・E・ブルムリーのカバー。

アウトテイクについて



2007年には、このアルバムのセッションで録音された未発表曲「Sidewalks, Fences, and Walls」のテープがオークションに出品されました。このテープには、ディランの歌唱バージョンと、プロデューサーのデヴィッド・ブリッグスとの会話が収録されています。

アルバムを彩るパーソネル



このアルバムには、多くのミュージシャンが参加しており、その多様な才能が作品に深みを与えています。

  • - ドラムス: マイク・ベアード、スライ・ダンバー、スティーヴ・ジョーダン、ヘンリー・スピネッティ、スティーブン・シェルトン
  • - バック・ボーカル: ペギー・ブルー、アレクサンドラ・ブラウン、キャロリン・デニス、フル・フォース、ウィリー・グリーン・ジュニア、ボビー・キング、クライディー・キング、マデリン・ケベック
  • - ギター: エリック・クラプトン、スティーブ・ジョーンズ、ダニー・コーチマー、マーク・ノップラー
  • - キーボード: アラン・クラーク、ミッチェル・フルーム、ボー・ヒル、マデリン・ケベック、スティーブン・シェルトン
  • - ベース: ネイザン・イースト、ランディ”ジ・エンペラー”ジャクソン、ラリー・クライン、ロビー・シェイクスピア、ポール・シムノン、キップ・ウィンガー、ロン・ウッド
  • - ボーカル: ジェリー・ガルシア、ブレント・ミドランド、ボブ・ウェア
  • - その他: ボブ・ディラン（ギター、ハーモニカ、キーボード、ボーカル）、コーク・ジョンソン（エンジニア）、マイク・クロスター、ジェフ・ミュセル、ジム・プレジオーシ、ブライアン・ソーシー（アシスタント・エンジニア）、スティーブン・シェルトン（エンジニア、ミキシング）


リリース


日本でもリリースされました。

カバー


アルフィー・ボーのアルバム『ストーリーテラー』に「ランク・ストレンジャー・トゥ・ミー」が収録されています。


『ダウン・イン・ザ・グルーヴ』は、ボブ・ディランのキャリアの中でも異質な作品として、賛否両論が分かれるアルバムです。しかし、その特異なサウンドと豪華なミュージシャンたちの参加は、聴く者に様々な発見をもたらすでしょう。

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