ダサブビル

ダサブビル（Dasabuvir）

概要

ダサブビルは、C型肝炎ウイルス（HCV）感染症の治療に用いられる直接作用型抗ウイルス薬（DAA）の一つです。HCVの複製に必要な特定の酵素の働きを阻害することで、ウイルスの増殖を強力に抑制する薬剤です。

作用機序

ダサブビルはNS5Bポリメラーゼ阻害薬として分類されます。C型肝炎ウイルスの遺伝子（RNA）は、ウイルス自身が持つNS5Bと呼ばれる酵素（RNA依存性RNAポリメラーゼ）によって複製されます。このNS5Bは、ウイルスの増殖に不可欠な役割を果たしています。ダサブビルは、このNS5B酵素に結合し、その機能を阻害します。これにより、ウイルスRNAの複製が停止し、結果として体内のウイルス量が減少します。NS5Bを標的とする薬剤は、HCV治療において重要な役割を果たしています。

併用療法

ダサブビルは、通常、単独で投与されることはなく、複数の抗ウイルス薬と組み合わせて使用されます。特に、オムビタスビル（Ombitasvir）、パリタプレビル（Paritaprevir）、リトナビル（Ritonavir）という他の薬剤との併用療法として用いられることが一般的でした。オムビタスビルはNS5A阻害薬、パリタプレビルはNS3/4Aプロテアーゼ阻害薬、そしてリトナビルはパリタプレビルの薬物動態を改善するための薬剤（非抗ウイルス作用）です。
ダサブビルとこれらの薬剤を組み合わせた治療法は、異なる作用機序でHCVを攻撃するという特徴を持ちます。これは、HCVライフサイクルの複数の段階を同時に阻害することで、より高いウイルス排除効果を目指すものです。また、複数の薬剤を併用することにより、特定の薬剤に対する耐性ウイルスが出現するリスクを低減させる効果も期待できます。この多剤併用療法は、特定の遺伝子型を持つC型肝炎患者さんに対して高い奏効率（SVR：sustained virologic response、持続的ウイルス応答）を示すことが報告されています。

商品名および開発コード

ダサブビルは、特に欧州においてはExvieraという商品名で知られていました。また、開発段階ではABT-333というコードネームが付けられていました。薬剤は開発段階から承認・販売に至る過程で様々な名称が使用されますが、ABT-333はダサブビルの開発コード名です。

C型肝炎治療における意義

ダサブビルを含む直接作用型抗ウイルス薬（DAA）の登場は、C型肝炎治療に大きな変革をもたらしました。従来のインターフェロンベースの治療法と比較して、DAAによる治療は効果が非常に高く、治療期間が短縮され、さらに副作用が少ないという利点があります。これにより、多くのC型肝炎患者さんがより安全かつ確実にウイルスを排除できるようになりました。ダサブビルが組み込まれた併用療法も、このDAA治療薬の時代の重要な一翼を担いました。C型肝炎は慢性化すると肝硬変や肝がんに進行するリスクがあるため、効果的な治療薬の登場は公衆衛生上も非常に意義深いものです。ダサブビルは、特定の患者群に対する治療選択肢として、過去の治療レジメンにおいて重要な位置を占めていました。

まとめ

ダサブビルは、C型肝炎ウイルスの複製に必要なNS5Bポリメラーゼを阻害する直接作用型抗ウイルス薬です。単独ではなく、オムビタスビルやパリタプレビル、リトナビルといった他の薬剤との併用療法で用いられ、特に欧州ではExvieraという商品名で知られていました。開発コードはABT-333です。ダサブビルを含むDAA併用療法は、C型肝炎治療の成功率を大幅に向上させ、多くの患者さんのQOL向上に貢献しました。

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