ダニエル (ヴェステルイェートランド公)

スウェーデンのダニエル王子

ダニエル王子（Prins Daniel）は、1973年9月15日、スウェーデン中部のエレブルーに、オーロフ・ダニエル・ベストリングとして生を受けました。ヴェステルイェートランド公爵でもあり、ベルナドッテ王朝に連なるスウェーデン王室の成員です。奇しくも、その誕生日は義父にあたるカール16世グスタフ国王が即位した記念すべき日と重なります。彼はオッケルボーで少年時代を過ごし、学業を終えた後、イェブレに駐屯する陸軍歩兵連隊で短い期間ながら兵役に服しました。

軍務を終えたダニエル氏は、自身の情熱を注いでいたフィットネスの世界へ進みます。ストックホルムの中心部にトレーニングジムを設立し、実業家として成功を収めました。彼のジムは、健康意識の高い人々やアスリートたちの間で評判を呼びました。

運命の出会い

そのジムで、ダニエル氏は生涯の伴侶となるスウェーデン王室のヴィクトリア王太子と出会います。当時、摂食障害から回復途上にあった王太子は、健康を取り戻すため、特に落ちた筋肉をつけようと彼のジムに通っていました。2002年、ダニエル氏が王太子の個人トレーナーを務めることになったのを機に、二人の距離は急速に縮まり、やがて恋愛関係へと発展していきました。

反対と受容への道のり

しかし、王太子と一般市民であるダニエル氏の交際は、当初大きな障壁に直面します。カール16世グスタフ国王は、実業家として成功していたとしても、王室という厳格な世界とは異なるバックグラウンドを持つダニエル氏を王室の一員として受け入れることに難色を示しました。国王が娘からダニエル氏との関係を打ち明けられた際、ショックのあまり無言で席を立ち、数ヶ月間、王太子とほとんど言葉を交わさなかったという逸話は、当時の国王の心情を物語っています。多くのスウェーデン国民もまた、この組み合わせに懐疑的な目を向けていました。

それでも、ヴィクトリア王太子は諦めませんでした。父王とダニエル氏との会食の機会を設けるなど、懸命な努力を重ねた結果、最終的に国王も二人の関係を認めざるを得なくなります。ただし、国王はダニエル氏に対し、スウェーデン王室に相応しい知識や教養を身につけることを強く求めました。

王室への準備と健康問題

この国王の要請に応える形で、ダニエル氏は王室の一員となるための厳しい学習を開始します。約7年間にわたり、一流の専門家たちから、王室の慣習やマナー、外国語（3ヶ国語）、スウェーデン史、公務のあり方など、多岐にわたる知識と教養を集中的に学びました。当時の外務大臣が歴史の教師を務めたという事実は、この準備がいかに本格的であったかを物語っています。こうした努力が実り、2009年2月24日、国王とスウェーデン政府は、王位継承法の規定に基づき、王太子とダニエル氏の正式な婚約を発表しました。

婚約発表から約3ヶ月後の2009年5月28日、ダニエル氏は先天的な腎臓の疾患のため、カロリンスカ大学病院で腎臓移植手術を受けました。提供者は実の父親でした。王室からは手術の成功と父子両名の順調な回復が伝えられましたが、この時、公務でグリーンランドを訪問中だった王太子は手術に立ち会うことができませんでした。

結婚、そして現在

二人の結婚式は、国王夫妻が結婚34周年を迎える記念すべき日、2010年6月19日に、ストックホルム大聖堂で盛大に執り行われました。この結婚に伴い、ダニエル氏は正式に「王子（prins）」の称号を与えられ、さらに王太子が持つヴェステルイェートランド公爵の称号も共同で授与されました。

結婚後、ダニエル王子は王太子の公務を支え、王室の一員として様々な公務に参加しています。2009年3月には王太子の聖名祝日記念式典や宮殿での公式晩餐会に初めて出席し、同年7月にはソリーデン宮殿での外国要人との昼食会にも臨席するなど、着実に公務の経験を積んでいます。

私生活では、2012年2月23日に第一子となるエステル王女、2016年3月2日には第二子となるオスカル王子が誕生し、二人の子供たちの父親となりました。現在は、夫として、父として、そして王室の一員として、公務に励んでいます。

子供

エステル王女（スウェーデン語: Prinsessan Estelle, 2012年2月23日生）
オスカル王子（スウェーデン語: Prins Oscar, 2016年3月2日生）

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