ダニエル・ソランダー

ダニエル・ソランダー：18世紀を代表する植物学者

ダニエル・ソランダー(1733年2月19日-1782年5月16日)は、スウェーデン出身の植物学者であり、18世紀の博物学に多大な貢献をした人物です。彼は、植物分類学の父と呼ばれるカール・フォン・リンネに師事し、その才能を認められ、世界的な探検航海にも参加するなど、波乱に満ちた生涯を送りました。

リンネとの出会いからイギリスへ

ソランダーは、スウェーデンのノールボッテン県ピーテオ市でルター派の牧師の息子として生まれました。ウプサラ大学で言語学と人文科学を学んでいた彼は、当時植物学教授であったリンネと出会います。リンネはソランダーの並外れた才能を見抜き、彼の父を説得して博物学の道へ進むよう促しました。リンネの新しい分類体系に深く感銘を受けたソランダーは、その普及に貢献するため、1760年にイギリスへと渡ります。

クック船長と共に太平洋へ

イギリスに渡ったソランダーは、1763年に大英博物館の補助学芸員となり、翌年には王立協会フェローに選出されるなど、順調にキャリアを積んでいきます。そして1768年、転機が訪れます。彼は、植物学者ヘルマン・スペーリングと共に、探検家のジョゼフ・バンクスに雇われ、ジェームズ・クック船長のエンデバー号による太平洋探検航海に参加することになったのです。

この航海において、ソランダーはオーストラリア東海岸の植物相の調査に大きく貢献しました。彼らの植物学者としての参加は、オーストラリアで最初に着岸した場所が「ボタニー湾」(Botany Bay) と名付けられるという歴史的出来事につながります。グレートバリアリーフでの座礁事故やクックタウンでの滞在など、航海の困難を乗り越えながら、彼は貴重な植物標本を収集し、記録しました。これらの記録は後に「バンクス植物図譜」としてまとめられ、オーストラリアの植物研究の基礎を築きました。

帰国後の活躍とソランダー・ボックス

1771年に帰国後も、ソランダーはバンクスの秘書兼司書として働き続け、アイスランド、フェロー諸島、オークニー諸島への航海にも同行しました。1773年から1782年にかけては大英博物館自然史部管理者を務め、太平洋航海で収集した膨大な標本を整理・分類する役割を担いました。

ソランダーの業績の中でも特筆すべきは、図面や文書、植物標本などを保存するための本型の箱、「ソランダー・ボックス」の発明です。この箱は、標本の保存と管理に革命をもたらし、現在でも図書館や博物館などで広く使用されています。

没後も続く影響

1782年、49歳の若さで脳梗塞のため亡くなりましたが、ソランダーの名は、ニュージーランド南島沖のソランダー島やロンドンのソランダー・ガーデンなど、地名に残されています。また、多くの植物の学名にも彼の名が献名されており、彼の植物学への貢献がいかに大きかったかを示しています。主な著書に、バンクスとの共著である『Captain Cook's Voyage Round the World』の植物図譜や『The Natural History of Many Curious and Uncommon Zoophytes』があります。

ソランダーは、リンネの分類体系を世界に広め、クック船長の航海における植物調査を成功に導き、現代の標本管理に革命を起こした、まさに18世紀を代表する植物学者でした。彼の功績は、今もなお、植物学研究の礎として受け継がれています。

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