ダニエル・チェスター・フレンチ

ダニエル・チェスター・フレンチ：アメリカを代表する彫刻家

ダニエル・チェスター・フレンチ（1850年4月20日 - 1931年10月7日）は、アメリカ合衆国を代表する彫刻家の一人です。特に、ワシントンD.C.にあるリンカーン記念堂のエイブラハム・リンカーンの座像の制作者として、その名を知られています。

生い立ちと初期の芸術的影響

フレンチは、ニューハンプシャー州のエクセターで生まれました。父親は法律家、判事であり、アメリカ合衆国財務省の副長官を務めた人物でした。1867年に家族とともにマサチューセッツ州のコンコードに移り住んだことが、彼の人生に大きな影響を与えます。コンコードでは、哲学者ラルフ・ウォルドー・エマーソンや小説家ルイーザ・メイ・オルコットといった著名な人物の近くに住み、彼らから多大な影響を受けました。また、オルコット家の末娘で画家であった妹のメイ・オルコット(Abigail May Alcott Nieriker: 1840–1879)の影響も受け、フレンチは美術の道に進むことを決意します。

フレンチは、画家ウィリアム・リマー(William Rimmer:1816–1879)やウィリアム・モリス・ハントに師事し、芸術の基礎を築きました。マサチューセッツ工科大学で1年間学んだ後、イタリアに渡り、フィレンツェでマサチューセッツ出身の彫刻家、トマス・ボール(Thomas Ball)の工房でさらに技術を磨きました。

代表作と評価

フレンチの初期の重要な作品の一つに、アメリカ独立戦争のレキシントン・コンコードの戦いから100年を記念してコンコード市から依頼された民兵の記念像(The Minute Man)があります。この像は1875年に除幕式が行われ、フレンチの名声を高めるきっかけとなりました。その後、ワシントンD.C.にスタジオを開設し、ボストン、ニューヨークへと拠点を移しながら制作活動を続けました。

1893年のシカゴ万国博覧会のために製作した「Statue of the Republic」は、フレンチの彫刻家としての評価を確立する上で非常に重要な作品となりました。この作品を機に、彼は数多くの記念碑や彫刻の制作依頼を受けるようになり、アメリカを代表する彫刻家としての地位を確立しました。

受賞と栄誉

フレンチは、その芸術的功績により、数々の賞と栄誉に輝いています。1893年には全米彫刻協会(National Sculpture Society)の創設会員となり、1913年にはアメリカ芸術科学アカデミーのフェローに選出されました。1901年にはナショナル・アカデミー・オブ・デザインの会員となり、米国芸術文学アカデミー(American Academy of Arts and Letters)の会員やローマのアカデミア・ディ・サン・ルカの会員にも選ばれています。また、フランス政府からはレジオンドヌール勲章（シュヴァリエ）を受勲するなど、国際的にも高い評価を受けていました。

主要作品

The Minute Man：マサチューセッツ州コンコード
Statue of the Republic：シカゴ万国博覧会
* エイブラハム・リンカーンの座像：リンカーン記念堂、ワシントンD.C.

ダニエル・チェスター・フレンチの作品は、アメリカの歴史と文化を象徴するものとして、今日も多くの人々に愛され続けています。

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