ダブリン高等研究所

ダブリン高等研究所（DIAS）

ダブリン高等研究所（DIAS: Dublin Institute for Advanced Studies）は、アイルランドのダブリンにある国立の研究所です。1940年にエイモン・デ・ヴァレラ首相によって設立され、理論物理学、宇宙物理学、ケルト学の3つの学部で構成されています。

歴史

DIASは、アイルランドにおける高等教育と研究の発展を目指し、プリンストン高等研究所をモデルに設立されました。デ・ヴァレラ首相は、数学と天文学の分野における著名な学者との会合を経て、ダンシンク天文台の復活と高等教育機関の設立を決意しました。

研究所の設立には、当時、大学教育が特権階級のものであったため、議論もありました。しかし、デ・ヴァレラは、アイルランドが国際的な舞台で存在感を示すために、高レベルの研究機関を持つことの重要性を認識していました。

組織と研究

DIASは、理論物理学部、宇宙物理学部、ケルト学部の3つの学部で構成されています。

理論物理学部：エルヴィン・シュレーディンガー教授によって設立され、量子理論、非線形場の理論、中間子理論、一般相対性理論などの研究が行われてきました。
宇宙物理学部：天文学、地球物理学、宇宙線学の3つの主要な研究分野があり、アイルランドの大陸棚が以前に考えられていたよりもはるかに大きいことを実証しました。また、アイルランド国家地震ネットワーク（INSN）を維持しています。
ケルト学部：アイルランド語の歴史と文学、写本の目録作成、文法研究、方言の研究など、ケルト文化の研究に取り組んでいます。

財政危機の影響と現状

2009年の金融危機時には、DIASをユニバーシティ・カレッジ・ダブリンかトリニティ・カレッジのいずれかに統合する提案が出されましたが、2013年のレビューにより、独立した研究機関としての存続が決定しました。2018年春の時点で、DIASは教育・職業技能省に報告する独立した機関として運営されています。

ケルト学部の詳細

ケルト学部は、研究所の最初の2つの学部の1つとして設立され、オズボーン・バーギンが初代学部長を務めました。ケルト語派の言語、アイルランド語の歴史と文学、写本の研究など、幅広い分野を扱っています。

研究プロジェクト

Irish Script on Screen Project（ISOS）：アイルランドの写本のデジタル画像を世界中の図書館から利用可能にするプロジェクトです。
* Ogham in 3D Project：オガム文字による中世初期の碑文を3Dデジタル画像としてキャプチャしてカタログ化するプロジェクトです。

出版物と奨学金

ケルト学部は、ケルト学に関する論文誌Celticaを1946年から発行しており、ケルト学の全ての分野の研究を発表しています。また、若手研究者に対するオドノヴァン奨学金、上級研究者に対するバーギン・フェローシップを提供しています。

理論物理学部の詳細

理論物理学部は、エルヴィン・シュレーディンガー教授によって設立され、量子力学に関する講義を提供しました。ヴァルター・ハイトラーが助教授として加わり、化学結合の量子理論を紹介する講義を行いました。

研究分野

初期の研究は、非線形場の理論、中間子理論、一般相対性理論および幾何学に焦点を当てていました。ジョン・ライトン・シンが一般相対性理論と幾何学の研究を行い、コルネリウス・ランチョスが数値解析を研究対象に加えました。

宇宙物理学部の詳細

宇宙物理学部は1947年にDIASに追加され、天文学、地球物理学、宇宙線学の3つの主要な研究分野がありました。エドワード・フランシス・フェイヒーが1970年から1995年まで学部長を務めました。

研究分野の変遷

宇宙線部門は理論天体物理学部門に進化し、天文学部門と統合されて単一の天文学・天体物理学部門になりました。地球物理学部門は、大気物理学の研究から地震研究に重点を置いた固体地球物理学に移行しました。

現在の研究

天文学・天体物理学部門は、恒星と惑星の形成、大質量星の進化、高エネルギー現象学と天体粒子物理学を研究しています。地球物理学部門は、地球規模の遠地地震の研究、火山の地震学、地球の重力場・磁場の研究などを行っています。

DIASは、アイルランドにおける高度な研究を推進し、国際的な学術交流を促進する重要な役割を果たしています。

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