ダンシンク天文台

ダンシンク天文台について

ダンシンク天文台は、アイルランドの首都ダブリン近郊のダンシンクに位置する天文台です。1785年に設立され、長い歴史の中で数々の天文学上の発見や研究が行われてきました。特に有名なのは、数学者であり天文学者でもあったウィリアム・ローワン・ハミルトンが、この天文台から街までの道のりを妻と歩いている時に四元数を発見したというエピソードです。この道筋は「ハミルトン・ウォーク」として知られ、毎年イベントも開催されています。また、ハミルトンの力学の定式化もここで行われました。

しかし、20世紀後半には、天文台の近くまで市街地が拡大し、光害により観測環境が悪化しました。現在では、最新の望遠鏡が設置されているわけではないため、主に一般公開（オープンナイト）で利用されています。現在、ダンシンク天文台はダブリン高等研究所（DIAS）の一部として運営されており、客員研究員のための宿泊施設や会議、一般公開イベントなど多目的に利用されています。天文台では、天文学者による天文学や天体物理学に関する講演会が定期的に開催され、グラッブ望遠鏡を使用した天体観測イベントも実施されています。

歴史

ダンシンク天文台は、トリニティ・カレッジの学長であったフランシス・アンドリューズの遺言に基づいた3,000ポンドの寄付によって設立されました。天文台の建設地は、ダンシンクの町の低い丘の南斜面で、海抜84mの場所です。観測に使用された主な望遠鏡の一つに、トーマス・グラッブが1868年に製作した南望遠鏡があります。この屈折望遠鏡は、口径11.75インチの色消しレンズを使用しており、元々はジェームズ・サウスがパリのロベール＝アレー・コーショワから購入したものを寄贈したものです。

また、1880年以降、アイルランドの標準時は、ダンシンク天文台における平均太陽時であるダブリン平均時でした。これは、グリニッジ平均時(GMT)がロンドン近郊のグリニッジ天文台における平均太陽時であったことと同様です。しかし、1916年にアイルランドはGMTに移行しました。

1936年、トリニティカレッジは天文台の維持を停止し、土地を貸し出しました。その後、1940年にDIASを設立したエイモン・デ・ヴァレラが、1947年にダンシンク天文台をDIASに編入し、宇宙物理学の研究施設として新たな役割を与えることになりました。

天文台長とアンドリューズ教授

天文学のアンドリューズ教授は、ダブリン大学の天文学の教授であり、ダンシンク天文台長に関連する職です。この職も天文台と同様にフランシス・アンドリューズの寄付により1783年に設立されました。トリニティ・カレッジの学則には、「天体と太陽、月、惑星を定期的に観測する」ことが義務付けられていました。この職は1921年以降空席となり、1966年に学則の改正により廃止されましたが、1984年にダブリン高等研究所の宇宙物理学部長の名誉称号として復活しました。

1793年以降、イギリス国王ジョージ3世の勅許に基づき、天文学のアンドリューズ教授はアイルランド王室天文官の称号を保持していましたが、この称号も1966年に消滅し、以降復活していません。

参考文献

“The Andrews Professor of Astronomy of Astronomy (1783)”. School of Physics. Trinity College Dublin.
Wayman, P. A. (March 1986). “The Andrews' Professors of Astronomy and Dunsink Observatory, 1785–1985”. Irish Astronomical Journal 17 (3): 167–183.

関連項目

ダブリン高等研究所

外部リンク

Dunsink Observatory
* Astronomy Trail

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