ダルマチア王国

ダルマチア王国：アドリア海の歴史を彩る王国

ダルマチア王国は、1815年のウィーン会議から1918年のオーストリア＝ハンガリー帝国崩壊まで存在した、オーストリア帝国およびオーストリア＝ハンガリー帝国の構成国でした。現在のクロアチア沿岸部にあたるダルマチア地方全域を領有し、首都はザダルに置かれていました。

歴史

ヴェネツィアからオーストリアへ

1797年、ナポレオン率いるフランス軍がヴェネツィア共和国を占領し、カンポ・フォルミオ条約によってダルマチアはオーストリアの支配下に入りました。1805年のプレスブルクの和約でフランスに割譲され、イリュリア州の一部となりますが、1814年のウィーン会議で再びオーストリア領となり、ダルマチア王国が成立しました。

ハプスブルク帝国の統治下で

1848年のハンガリー革命では、一時的にクロアチアのヨシップ・イェラチッチの支配下に入りましたが、自治を求めるイタリア語話者の勢力が強く、クロアチアとの統合は実現しませんでした。1867年のアウスグライヒ（妥協）により、ダルマチア王国はオーストリア帝冠領に属し、クロアチア＝スラヴォニア王国とは異なる道を歩むことになります。

王国の終焉

第一次世界大戦でオーストリア＝ハンガリー帝国が崩壊すると、ダルマチア王国は解体され、ザダルなど一部地域はイタリアに併合されましたが、大部分はスロベニア人・クロアチア人・セルビア人国（後のユーゴスラビア王国）の一部となりました。

ハプスブルク帝国時代

ヴェネツィア共和国の滅亡後、ダルマチアではクロアチア民族再生運動が起こり、ダルマチアとクロアチアの統一が求められました。しかし、オーストリア政府はこれを認めず、ダルマチアはオーストリアの直轄地として統治されました。1798年にはザダルに王立政府が設立され、ダルマチア王（オーストリア大公）によって任命された総督が統治を行いました。

フランス帝国時代

1805年のプレスブルクの和約によって、ダルマチアはフランス帝国に割譲され、イタリア王国に併合されました。ナポレオンはダルマチア総督を任命し、ザダルに政府を置いてイタリア語を公用語としました。フランスの統治下では、法の下の平等が導入され、行政区画の再編が行われるなどの改革が行われました。また、二言語で書かれた週刊誌「Il Regio Dalmata – Kraglski Dalmatin」が発行され、教育にも力が入れられました。

ダルマチア王国時代

1813年、オーストリア帝国はイリュリア州を占領し、ダルマチアも再びオーストリアの支配下に入りました。1815年のウィーン会議で、ダルマチア王国が正式に成立し、新たな州政府が設立されました。1861年にはダルマチア国会が設立されましたが、オーストリア政府はダルマチアを帝国に繋ぎ止めるため、オーストリアや北イタリアから公務員を派遣しました。

ダルマチアでのクロアチア国民復興

フランスとオーストリアの統治、そしてクロアチア王国におけるイリュリア運動の思想は、ダルマチアでのクロアチア国民意識の目覚めに大きく貢献しました。1835年には「セルビア＝ダルマチア雑誌」が、1844年には「ダルマチアの黎明」という雑誌が創刊され、ダルマチアの言語的および国家的認識の確立に取り組み始めました。

人民党と自治党の対立

1860年代になると、ダルマチアではクロアチア民族主義の人民党と、イタリア民族主義の自治党との対立が激化しました。人民党は、ダルマチアとクロアチア＝スラヴォニアの統一と、行政と教育におけるクロアチア語の導入を主張しました。1870年代には人民党が勢力を拡大し、主要都市で勝利を収め、1883年にはクロアチア語がダルマチア国会の公用語となりました。

第一次世界大戦

第一次世界大戦が勃発すると、オーストリア政府は親セルビア的な組織を禁止し、多くの政治家が迫害を受けました。1918年、オーストリア＝ハンガリー帝国議会が解体されると、クロアチア＝スラヴォニア議会はクロアチア＝スラヴォニア王国がオーストリア＝ハンガリー帝国との関係を終了し、ダルマチア王国とともにスロベニア人・クロアチア人・セルビア人国に加わることを可決しました。これにより、ダルマチア王国は消滅しました。

人口動態

ダルマチア王国の人口は、時代によって変動しましたが、クロアチア人が多数を占めていました。1880年の国勢調査では、クロアチア人が371,565人、セルビア人が78,714人、イタリア人が27,305人でした。1910年には、セルビア・クロアチア語を話す人が610,649人、イタリア語を話す人が18,028人でした。

行政区画

ダルマチア王国は、郡、地区、市、村に分けられていました。1868年には郡が廃止され、13の行政区に分けられました。行政区には政府が任命した知事が置かれ、行政区はさらに司法地区に分けられました。

産業

ダルマチア王国の国民は、主に牧畜、ブドウやオリーブの栽培、漁業、造船などを生業としていました。

ダルマチア王国は、その短い歴史の中で、様々な勢力の影響を受け、複雑な政治的・社会的変動を経験しました。しかし、その文化的遺産は、今日でもダルマチア地方に色濃く残っています。

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