ダンツシリウス

ダンツシリウス

ダンツシリウス（欧字名: Dantsu Sirius）は、1995年3月29日に日本で生まれた牝馬の競走馬、および繁殖牝馬です。特筆すべきは、1998年のクラシック戦線に向けて、牡馬相手の重賞であるシンザン記念と、牝馬重賞のチューリップ賞を連勝し、一躍有力候補に名乗りを挙げたことです。

華々しいデビューとクラシックへの道

ダンツシリウスの競走生活は、1997年6月の3歳新馬戦で幕を開けました。初勝利を挙げるまでに約2ヶ月を要しましたが、その後の進境は目覚ましく、わずか1勝馬ながら果敢に阪神3歳牝馬ステークス（現在の阪神ジュベナイルフィリーズ）に挑み、強豪相手に3着と健闘しました。この結果は、彼女の潜在能力の高さを証明するものでした。

年が明けて1998年、ダンツシリウスは牡馬混合のシンザン記念に出走します。このレースは不良馬場で行われ、圧倒的な人気を集めていたアグネスワールドが道悪に苦戦する中、ダンツシリウスは見事な末脚を繰り出し差し切り勝ちを収めました。これが彼女にとって初めての重賞制覇であり、牡馬相手の勝利という価値あるものでした。

続くチューリップ賞でも、前走の勝利を受けて2番人気に支持されます。レースでは馬群の中団を進み、直線で鋭く抜け出して優勝。見事重賞2連勝を飾り、牝馬クラシック第一冠である桜花賞に向けて最大の弾みをつけました。

桜花賞での大敗と悲運

重賞連勝の勢いを引っ提げて迎えた桜花賞では、単勝1番人気に推されるほどの期待を集めます。しかし、レースはロンドンブリッジが驚異的なペースで引っ張る、前半1000メートル57秒7という非常に速い流れとなりました。このハイペースに巻き込まれたダンツシリウスは、直線に入る頃には既に脚色が鈍り、後続馬に抜かれ続け11着と大敗を喫してしまいます。この結果は、それまでの快進撃を知る多くのファンにとって衝撃的なものでした。

当時の競馬評論家である大川慶次郎氏は、桜花賞を前にダンツシリウスについて「キャリア11戦と明らかに使いすぎで、調子も下降線が気になる」と指摘しており、その懸念が的中してしまった形となりました。

桜花賞後、陣営は牝馬二冠目のオークスを目指し調整を進めていました。しかし、5月6日の調教中に右前脚の第一趾骨（指骨）を骨折するアクシデントに見舞われます。手術を行い、一旦は生まれ故郷の牧場で放牧休養に入り復帰を目指しますが、11月に帰厩した矢先に今度は左前脚の種子骨を骨折してしまいます。この骨折は重度のものであり、残念ながら現役への復帰は不可能と判断され、そのまま競走馬を引退することとなりました。将来を嘱望された名牝候補の競走生活は、突然の故障によって幕を閉じたのです。

繁殖生活と牝系の途絶

競走馬引退後、ダンツシリウスは北海道門別の長田ファームで繁殖牝馬となりました。しかし、不受胎が多く、生涯で残すことのできた産駒はわずか4頭（全て牝馬）に留まりました。その後、広中稔牧場へ移動しましたが、2008年7月18日に疝痛のため亡くなりました。享年13歳でした。残念ながら、彼女の産駒はいずれも繁殖入りすることなく、ダンツシリウスの牝系は途絶えてしまっています。

血統的には、全兄に1997年の東京障害特別（春）を勝ったマイネルトレドールが、叔父にはステイヤーズステークスを2勝したピュアーシンボリがいるなど、活躍馬を輩出しているファミリーの出身でした。

シンザン記念、チューリップ賞を連勝し、クラシックの有力候補としてその将来を期待されながらも、度重なる故障に泣き、志半ばでターフを去ることになったダンツシリウス。その短いながらも輝きを放った競走生活、そして残念ながら繋がらなかった牝系は、多くの競馬ファンの記憶に残っています。

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