ダン・ビガー

ダン・ビガー

ダン・ビガー（Dan Biggar）は、1989年10月16日生まれのウェールズのラグビーユニオン選手。スタンドオフとして、ウェールズ代表の主軸を担い、クラブレベルではオスプリーズ、ノーサンプトン・セインツを経て、現在はトップ14のRCトゥーロンに所属している。

キャリア初期とオスプリーズでの飛躍

ビガーのシニアキャリアは、2007-08シーズンにケルティック・リーグ（現在のプロ12/プロ14）のオスプリーズで始まった。当時18歳だった彼は、2008年3月22日のアングロ・ウェルシュカップ、サラセンズ戦でジェームズ・フックに代わりデビューを果たした。ウェールズ代表デビューも早く、2008年11月18日、カナダ戦で19歳にしてジェームズ・フックに代わって初キャップを獲得した。

オスプリーズでは着実に成長を遂げ、2009-10シーズンにはレギュラーの座を確実にした。2011-12シーズンにはプロ12で21試合に出場し、257得点を記録して得点王のタイトルを獲得。チームのリーグ優勝にも大きく貢献し、レンスターとの決勝戦では16得点を挙げ、マン・オブ・ザ・マッチにも選ばれる活躍を見せた。

オスプリーズでのキャリアは長く、2017年4月8日のレンスター戦では、当時27歳ながらクラブ史上5人目となる200試合出場を達成。この試合では、出血の治療で一時ピッチを退いたものの再登場し、試合終了間際のペナルティゴールを外して勝利を逃すというドラマがあったが、その貢献度は揺るぎなかった。

2018年5月20日に行われたアルスター戦は、ビガーにとってオスプリーズのジャージを着てプレーする最後の試合となった。この試合で得点を記録したことで、プロ14での通算得点を1,585点とし、それまでダン・パークスが保持していた記録（1,582点）を更新した。

オスプリーズでは、歴代4位となる221試合に出場し、歴代1位の2,203得点を記録している。

ウェールズ代表での軌跡

ウェールズ代表では、2010年のシックスネーションズスコッドに名を連ねたが出場機会は訪れず、2011年のラグビーワールドカップへの選出も叶わなかった。しかし、2012年のシックスネーションズは負傷で欠場したものの、2013年大会ではリース・プリーストランドの負傷もあり、全ての試合で先発を務めた。特にイングランド戦では8得点を挙げ、30-3での歴史的な勝利とチームの2年連続優勝に貢献した。

ライオンズに選ばれなかった2013年6月の日本遠征にも参加し、2試合に先発。2戦目では日本に8-22と手痛い敗北を喫した。しかし、その後も代表での存在感を高め、2014年にはシックスネーションズ、南アフリカ遠征、秋のテストマッチでキッカーとしても活躍。南アフリカ戦ではマン・オブ・ザ・マッチに輝いた。

2015年シックスネーションズでは全試合に先発。イングランド戦では負傷しながらもフル出場するなど、闘志溢れるプレーを見せた。フランス戦で代表初トライを奪うなど、得点面でもチームを牽引した。

ラグビーワールドカップ2015での輝き

ラグビーワールドカップ2015では、負傷したリー・ハーフペニーに代わりゴールキッカーを任された。プールAの3試合と準々決勝の計4試合に先発出場し、56得点を記録。特にプレースキックの成功率は90.5%と、20本以上蹴った選手の中で最も高い成功率を記録した。イングランド戦では23得点（1コンバージョン、7ペナルティゴール）を挙げ、28-25での勝利に貢献し、マン・オブ・ザ・マッチにも選ばれた。フィジー戦、準々決勝の南アフリカ戦でも得点を重ねた。

この大会中、独特のキックルーティンが大きな話題となり、「ザ・ビガレーナ（The Biggarena）」という愛称で親しまれた。これらの活躍が認められ、2015年のBBC Wales スポーツパーソナリティー・オブ・ザ・イヤーに選ばれている。

その後の代表キャリア

2016年のシックスネーションズでも全試合先発し、大会得点ランキングで3位となる54得点を記録。イタリア戦では21得点を挙げ、チームの大会記録更新となる67-14での圧勝に貢献した。同年秋のテストマッチ、アルゼンチン戦で代表50キャップを達成した。

2017年シックスネーションズも全試合先発。ブリティッシュ＆アイリッシュ・ライオンズのニュージーランドツアーメンバーにも選ばれ、テストマッチでの出場機会はなかったものの、5試合に出場し35得点を記録。これはオーウェン・ファレルに次ぐ、ツアー全体の得点ランキング2位となった。

2018年のシックスネーションズは負傷で前半を欠場したが、復帰後はジャッジメント・デイのカーディフ・ブルーズ戦で1トライ、2コンバージョン、1ペナルティゴール、1ドロップゴールを記録し、合計15得点で「フルハウス」を達成。試合終了間際のドロップゴールがチームを劇的な勝利に導き、マン・オブ・ザ・マッチに選ばれた。

ラグビーワールドカップ2019でもウェールズ代表としてプレー。プール戦のオーストラリア戦では、試合開始からわずか35秒でドロップゴールを成功させ、ラグビーワールドカップ史上最速の記録を樹立した。

ウェールズ代表では、歴代15位となる102試合に出場し、歴代4位の583得点を記録している（2024年4月時点のデータに基づく）。

クラブキャリアの変遷と引退

オスプリーズ退団後、2018-19シーズンからはイングランドのノーサンプトン・セインツに移籍。ノーサンプトンでは69試合に出場し、607得点を記録した。

2022年からはフランスのRCトゥーロンに所属している。

2025年4月7日、自身のSNSで、2024-25シーズン限りでの現役引退を表明した。

主な記録

オスプリーズ (2007/08-2017/18):
221試合出場 (クラブ歴代4位)
2,203得点 (クラブ歴代1位)
ノーサンプトン・セインツ (2018/19-2021/2022):
69試合出場
607得点
ウェールズ代表 (2008-):
102試合出場 (歴代15位)
583得点 (歴代4位)
代表デビュー: 2008年11月14日 カナダ戦 (19歳29日)
ライオンズ (2017):
5試合出場 (テストマッチ出場なし)
35得点
シックス・ネーションズ (2013- ):
34試合出場
170得点
ラグビーワールドカップ (2015, 2019):
10試合出場
97得点
プロ14 (2007/08-2017/18):
159試合出場
1,585得点 (歴代1位)
プレミアシップ (2018/19-2021/2022):
69試合出場
193得点
チャンピオンズカップ (2008/09- ):
57試合出場
593得点
チャレンジカップ (2016/17- ):
10試合出場
* 80得点

類まれなキック精度と、どんな状況でもチームを鼓舞するリーダーシップで、ウェールズラグビーの歴史に名を刻んだ選手である。

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