ダーク・ハーフ (映画)

ダーク・ハーフ

スティーブン・キングの同名小説を原作に、巨匠ジョージ・A・ロメロが監督・脚本・製作総指揮を務めたアメリカ合衆国のホラー映画です。1991年に製作され、1993年にカラー作品として公開されました。

あらすじ

物語の主人公は、純文学の分野ではなかなか芽が出ない作家です。彼は生計を立てるため、ジョージ・スタークというペンネームを使い、過激でバイオレンス描写に満ちた大衆向けの小説を発表していました。皮肉なことに、こちらのスターク名義の作品が大ヒットし、彼は売れっ子作家としての地位を確立します。

しかし、主人公は自身の作家性を純文学に見出しており、この「ジョージ・スターク」という影の存在を疎ましく感じていました。ある時、彼は公にスタークの名前を葬り去ることを決意します。ところが、この架空の存在に終止符を打った直後から、主人公の周囲で説明のつかない猟奇的な連続殺人事件が発生し始めます。そして、恐ろしいことに、その残虐な犯人は、物理的に存在するはずのない「ジョージ・スターク」本人であったことが判明するのです。

実体を得てしまった別人格であるスタークは、主人公の前に姿を現し、再び自身名義の作品を執筆するように強要します。自己の内なる闇が生み出した分身との、逃れられない対決が始まります。

製作背景

本作の撮影には、ペンシルベニア州ピッツバーグ近郊にあるワシントン&ジェファーソン・カレッジがロケーションとして使用されました。特に、物語の冒頭に登場するボーモントの小説教室のシーンは同大学のオールド・メインにある礼拝堂で、ボーモントの事務所のシーンは大学のチャプレン事務所で撮影されています。撮影にあたっては、同大学の職員や学生もエキストラとして多数参加し、作品にリアリティを与えています。

主要なスタッフには、監督・脚本・製作総指揮のジョージ・A・ロメロのほか、製作にデクラン・ボールドウィン、原作にスティーブン・キング、撮影にトニー・ピーアズ・ロバーツ、編集にパスカル・ブーバ、音楽にクリストファー・ヤング、衣裳デザインにバーバラ・アンダーソン、特殊メイク効果にジョン・ユーリッチとエベレット・バレルといった面々がクレジットされています。

評価と受賞

公開後、本作はその完成度の高さが評価されました。1993年度のファンタフェスティバルでは、栄えある最優秀作品賞に輝いたほか、脚本賞、主演男優賞も受賞しています。また、1994年度のサターン賞でも、ホラー作品賞、監督賞、メイクアップ賞、助演女優賞の各部門にノミネートされるなど、ジャンル映画としての確固たる地位を築きました。

その他

日本語吹替版も複数存在します。ソフト版には荒川太郎、田原アルノ、坂口哲夫、定岡小百合、西宏子、麻見順子、小野英昭らが、テレビ東京版には北川勝博、星野充昭、岡本章子、坂口候一らがそれぞれ参加しています。2016年7月2日に発売されたHDニューマスター版ブルーレイには、これらのソフト版とテレビ東京版の両方の吹替音声が収録されています。

また、本作は監督であるジョージ・A・ロメロの功績を称え、彼の逝去後に特別な追悼上映が行われました。東京の映画館・新文芸坐にて、「ロメロ監督追悼企画」の一環として、2017年9月22日に一度限りで上映されています。

『ダーク・ハーフ』は、キングが得意とする人間の内面的な恐怖と、ロメロの視覚的な演出が見事に融合した、ホラー映画史において注目すべき一作と言えるでしょう。

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