ダード・ハンター

ウィリアム・ジョセフ・"ダード"・ハンター：手作り紙と印刷のパイオニア

ウィリアム・ジョセフ・"ダード"・ハンター（1883年11月29日 - 1966年2月20日）は、手作りの紙、製紙技術、そして印刷に関するアメリカにおける先駆者として知られています。彼は、16世紀の道具と技術を用いて、これらの分野で独自の道を切り開きました。

生涯と業績

ハンターは、特に200部のみ印刷された著書『Old Paper Making』でその名を知られています。この本の製作において、彼は文章の執筆、活字のデザインと鋳造、組版、手漉き紙の製作、印刷、そして製本に至る全ての工程を一人で行いました。スミソニアン博物館での展示では、彼の労作について「印刷の全歴史の中で、これらは一人の人間の労働によって完全に作られた最初期の書籍である」と評されています。また、彼は『Papermarking by Hand in America』（1950年）も著しています。

アーツ・アンド・クラフツ運動に積極的に参加したハンターは、他の種類の手作りの芸術品や工芸品を制作し、支援しました。彼は『Things You Can Make』などの独自のガイドも発行し、陶器、宝石、ステンドグラス、家具などの製作にも挑戦しました。さらに、ダード・ハンター手工芸学校という通信教育学校を設立し、手作りの技術を広めようとしました。

ハンターはオハイオ州スチューベンビルで生まれ育ち、父親が経営する印刷所で育ちました。オハイオ州立大学で学んだ後、エルバート・ハバードが経営するロイクロフトというアーツ・アンド・クラフツ会社でキャリアをスタートさせました。1908年にはロイクロフトで出会ったピアニストのエディス・コーネルと結婚し、新婚旅行でウィーンを訪れました。その後、彼はイタリアで製紙法を学び、ウィーンの王立帝国グラフィック教育実験研究所を卒業しました。

1911年、ハンター夫妻はロンドンに移り、ノーフォーク・スタジオで商業デザイナーとして働きました。この時期にロンドン科学博物館での展示が彼の製紙への関心を深めるきっかけとなりました。彼は、原初および初期の製紙法を探求するため、東アジア、サモア、トンガ、フィジーなどの太平洋地域を旅しました。

1912年にアメリカに帰国後、ハンターはニューヨーク州マールボロ近くのゴメス・ミル・ハウスを購入し、そこに小さな製紙工場を建設しました。当時、アメリカでは手漉き紙が生産されていなかったため、ヨーロッパから輸入する必要がありましたが、彼は自らの手で手漉き紙の製作を始めました。彼の英国製の製紙器具は3世紀も前の古いもので、木製の水車で動いていました。ハンターは46年間にわたり、製紙に関する20冊の本を執筆し、そのうち8冊は手書きで製作されました。

1919年、ハンター一家はオハイオに戻り、チリコシーの「マウンテン・ハウス」を購入しました。ハンターは、この家に隣接する建物をマウンテン ハウス プレスと名付け、活版印刷スタジオとして使用し、1922年から1956年まで手作りの本や製紙に関する書籍を制作・出版しました。1958年には自伝『My Life with Paper』を出版しました。

1930年、ハンターはコネチカット州ライムロックに製紙工場を開設しましたが、経営難により1933年に閉鎖されました。その後、彼は紙に関する博物館を開設することを考え、1939年にマサチューセッツ工科大学（MIT）と契約を結び、ダード・ハンター紙博物館を開設しました。1954年、博物館はウィスコンシン州アップルトンの紙化学研究所に移転し、ハンターは亡くなるまで学芸員を務めました。

死と遺産

ハンターは1966年2月20日にオハイオ州チリコシーで亡くなりました。彼の死後も、彼の業績は高く評価され、手製紙とブックアートの伝統を継続・促進するための団体「フレンズ オブ ダード ハンター」が設立されました。彼の著作は、現代の製紙業者にも影響を与え続けています。

ダード・ハンターの生涯は、手作り紙と印刷に対する情熱、そして伝統的な技術を未来に伝えるという強い意志に満ち溢れていました。彼の作品は、今もなお多くの人々にインスピレーションを与え続けています。

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