ダーレク・イン・マンハッタン

ダーレク・イン・マンハッタン：1930年代ニューヨークの闇に潜む脅威

『ドクター・フー』第3シリーズ第4話にして、2部構成の壮大な物語「ダーレク・イン・マンハッタン」とその後編「ダーレクの進化」。舞台は1930年代のニューヨーク。自由の女神やエンパイアステートビルディングといった象徴的な建造物が当時の雰囲気を醸し出す中、ドクターとマーサは、想像を絶するダーレクの陰謀に巻き込まれていく。

このエピソードの注目すべき点は、シリーズで初めて女性脚本家、ヘレン・レイナーが手掛けたダーレクを題材にした作品であることだ。さらに、イギリス国外でのロケが行われた最初のエピソードでもあり、ニューヨーク市内のセントラルパーク、エンパイアステートビルディング、そして自由の女神像なども使用されている。ただし、撮影の都合上、自由の女神像のシーンはウェールズで撮影されたという裏話もある。

物語は、第二シリーズ「永遠の別れ」を生き延びたスカロのダーレクたちが、ニューヨークのフーヴァー村というスラム街を拠点に、邪悪な計画を進めているところから始まる。彼らは半分人間、半分豚という恐るべき存在を作り出し、さらには人間を拉致して実験を行うという残虐な行為を繰り返していた。

ドクターとマーサの前に現れるのは、ダーレクと人間の融合体、ダーレク・セク。彼らの姿は、伝統的なダーレクのイメージとは一線を画す、新たな脅威を象徴している。また、この物語には、後に『アメイジング・スパイダーマン』で主演を務めるアンドリュー・ガーフィールドも出演しているなど、豪華な顔ぶれが物語に華を添えている。

このエピソードでは、過去シリーズからの伏線も巧みに配置されている。マーサがシェークスピアの舞台経験について言及するシーンは、過去のエピソード「言葉の魔術師」との繋がりを示唆しており、ドクターの「彼らはいつも生き残る、僕が全てを失うのに」というセリフは、ダーレクが何度も絶滅を繰り返しながら生き延びてきた歴史を彷彿とさせる。

さらに、ニューヨークという舞台設定を活かし、1930年代のアメリカ社会や文化、音楽などを巧みに取り入れている点も魅力の一つだ。ジョージ・ガーシュウィンやアーヴィング・バーリンといった巨匠の音楽が効果的に使用され、当時の活気に満ちたニューヨークの雰囲気を演出している。フーヴァー村のシーンでは、ソロモンの審判を彷彿とさせるエピソードも登場し、物語に深みを与えている。

視聴率は669万人を記録し、当時のイギリスで高い人気を誇っていたことが分かる。批評家の評価も高く、舞台設定、ダーレクのデザイン、デイヴィッド・テナントとキャシー・アジェマンの演技など、様々な点で高く評価されている一方、一部からはダーレクの描写やキャラクター設定に批判的な意見も挙げられている。

「ダーレク・イン・マンハッタン」は、歴史、文化、そしてスリリングなSFが融合した、シリーズの中でも特に記憶に残る傑作と言えるだろう。アメリカを舞台にした異色の展開、そして次へと続く後編「ダーレクの進化」への期待感も高まる、見逃せないエピソードだ。

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