チェコの歴史

チェコの歴史

チェコの地は、その中心となるボヘミア地方が、神聖ローマ帝国、オーストリア帝国、オーストリア・ハンガリー帝国といった周辺大国の影響を強く受けてきた歴史を持っています。さらに、ナチス・ドイツによる占領、第二次世界大戦後のソ連の影響下と、激動の時代を経て、現在のチェコ共和国へと至ります。

独立以前

紀元前5世紀頃からケルト人のボイイ族が定住し、この地は「ボヘミア」と呼ばれるようになりました。1世紀頃からはゲルマン民族が侵入し、5世紀頃には西スラヴ系のチェコ人が定着しました。7世紀にはフランク王国の商人がサモ国を建設しますが、短期間で滅亡。その後、モラヴィア王国が成立し、10世紀頃にはプシェミスル家によるボヘミア王国が建国されました。

プシェミスル朝（900年-1306年）

10世紀、チェコ人のプシェミスル家によってボヘミア王国が建国され、ヴァーツラフ1世が王に即位しました。10世紀末にはカトリックを受容し、西欧世界の一員となります。

1003年にはポーランドのボレスワフ1世がボヘミアを制圧しますが、プシェミスル家のヤロミールが神聖ローマ皇帝と結びつき、ボヘミアは神聖ローマ帝国の領邦となります。これにより、ボヘミアはオーストリア帝国に引き渡されるまで、ドイツ人の影響下におかれることになりました。

13世紀には、豊富な鉱物資源と商業の発展によりボヘミア王国は繁栄を極め、1212年には王国の称号と世襲が認められます。しかし、オタカル2世が神聖ローマ皇帝位を狙って失敗し、ハプスブルク家に敗れると、プシェミスル朝は断絶しました。

ルクセンブルク朝（1310年-1437年）

プシェミスル朝の断絶後、ドイツ系のルクセンブルク家がボヘミア王を世襲し、一層のドイツ化が進みました。カレル1世（神聖ローマ皇帝カール4世）の時代には、プラハ・カレル大学が創立され、プラハはヨーロッパ文化の中心地として栄えました。

15世紀に入ると、ヤン・フスによる教会改革運動が起こり、フス戦争が勃発します。フスはコンスタンツ公会議で火刑に処されますが、フスの教義はボヘミア人の広範な支持を得て、フス派は穏健派と急進派に分かれて長期にわたる抗争を続けました。1436年にフス戦争は終結し、翌年にはルクセンブルク朝が断絶。ハプスブルク家が神聖ローマ皇帝位を継承し、ボヘミアもその支配下に入ります。

ハプスブルク家の統治（1437年-1918年）

ハプスブルク家の支配下に入ったボヘミアは、ポーランドやハンガリーとの間で支配者が変わるなど、不安定な状況が続きます。フェルディナント1世がボヘミア王に選出されると、ハプスブルク家がボヘミアを統治する体制が確立しました。

ルドルフ2世の時代には、プラハは文化の中心として繁栄しましたが、三十年戦争（1618年〜1648年）によって荒廃し、ボヘミアはハプスブルク家の属領となりました。戦後、チェコ語の使用が禁止されるなど、ドイツ化が急速に進み、チェコは「暗黒時代」を迎えます。しかし、19世紀にはチェコ民族復興運動が起こり、民族意識が高まりました。

オーストリア帝国がオーストリア＝ハンガリー帝国となると、チェコ人の間では汎スラヴ主義が勃興し、スメタナやドヴォルザークといった音楽家が登場し、民族音楽を基にした作品を発表しました。

チェコスロバキア時代（1918年-1993年）

第一次世界大戦後の1918年、チェコとスロバキアが合同し、チェコスロバキア共和国として独立しました。しかし、国内のドイツ系住民問題や世界恐慌による経済の悪化から、ナチス・ドイツの侵攻を招き、1939年には解体されます。

第二次世界大戦後、ソ連の影響下に入り、共産党政権が成立。1968年には「プラハの春」と呼ばれる民主化運動が起こりますが、ソ連軍の介入によって鎮圧されます。1989年のビロード革命により共産党体制が崩壊し、ハヴェルが大統領に就任。1993年にはチェコとスロバキアが分離し、チェコ共和国が誕生しました。

チェコ共和国時代（1993年- ）

独立後、チェコ共和国は市場経済への移行を進め、1999年にはNATOに、2004年にはEUに加盟しました。ヴァーツラフ・ハヴェルに続き、ヴァーツラフ・クラウスが大統領に就任し、現在に至ります。

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