チェトニック

チェトニックについての詳細

チェトニック（セルビア・クロアチア語: Četnik）は、第二次世界大戦中のユーゴスラビアでセルビアの軍人たちによって組織された軍事抵抗組織です。この名称は19世紀のセルビアのゲリラに由来し、徹底した大セルビア主義と反共主義を信条としました。指導者ドラジャ・ミハイロヴィッチのもとで活動が始まりましたが、彼らの行動は複雑で、時には非常に矛盾していました。

1941年4月、ドイツ国防軍がユーゴスラビアに侵攻し、王国軍が迅速に壊滅した後、民間人の抵抗活動が始まりました。この時期、主な抵抗組織は2つ存在し、1つはユーゴスラビア共産党が指導するパルチザン部隊、もう1つがチェトニックでした。チェトニックは、降伏を拒んだセルビア人の将兵たちが結束した結果誕生しました。

チェトニックの組織は周囲の条件において限界がありました。山岳地帯でのゲリラ戦術が主流だったものの、彼らは正規軍による戦闘を希望し、そのための戦略を重視しました。また、早期に内部の腐敗が広がり、戦闘に不可欠な地元民の支持を得ることができませんでした。チェトニックは枢軸軍との戦闘から避け、むしろドイツの傀儡であるクロアチア独立国軍との間で交戦を繰り広げていました。

また、ユーゴスラビア亡命政府との関係も複雑でした。彼らは当初、亡命政府から支援を受けていましたが、1941年11月以降にドイツ及びその傀儡政権との協力関係が形成され、事実上の敵であるパルチザンに対する攻撃を強化しました。この結果、共に抵抗活動を行っていたはずのパルチザンとの間で対立が生まれました。

1943年には連合軍がイタリアに上陸し、次第に勢力が減退。最終的に1945年5月にドイツが降伏した際、チェトニックも崩壊しました。指導者ミハイロヴィッチは逃亡していましたが、後に逮捕され、裁判で処刑されました。

興味深いことに、チェトニックが掲げた「反独抵抗」の理念は、実際には非常に限られた戦闘しか行わず、むしろ敵対者や異なる民族に対する残虐行為が浮き彫りになりました。特に、民族的なライバルであるクロアチア人やムスリムに対する組織的な迫害が行われ、犠牲者数は数十万人に上るとされています。

戦後も、1990年代のユーゴスラビア紛争時にセルビア人民兵の一部がチェトニックの思想を引き継ぎ、名乗るようになり、その影響は現在でも警戒されています。極右政党が彼らの後継と自任し、各国での動向は今も注意が必要とされています。

このように、チェトニックは単なる軍事組織ではなく、民族主義の歴史を色濃く反映した存在でもあるため、その歴史を理解することはバルカン地域の複雑な人間関係を知る上で不可欠です。

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