チェリー・ピンク・チャチャ

チェリー・ピンク・チャチャ（Cerisiers Roses et Pommiers Blancs）

「チェリー・ピンク・チャチャ」という俗称で広く親しまれているこの楽曲の原題は、フランス語で「Cerisiers Roses et Pommiers Blancs」、英語では「Cherry Pink and Apple Blossom White」です。1950年にフランスの作曲家ルイギ（Louiguy）によって作曲されたポピュラー音楽のスタンダードナンバーであり、その後の数十年にわたり、世界中で様々なアーティストによって演奏され、愛され続けています。

概要と別名

楽曲のオリジナルはフランスで発表されましたが、その人気はすぐに世界へと広がり、各地で異なるタイトルやアレンジで知られるようになりました。代表的な別名としては、「チェリー・ピンク・マンボ（Cherry Pink Mambo）」、スペイン語の「セレソ・ローサ（Cerezo Rosa）」、イタリア語の「Ciliegi Rosa」などがあります。また、歌詞はフランス語版をジャック・ラルーが、英語版をマック・デイヴィッドが手掛けており、いずれも成功を収めました。しかし、この楽曲の歴史において最も重要な役割を果たしたのは、多くの場合、歌のないインストゥルメンタル版でした。

世界的な大ヒット：ペレス・プラード版

この楽曲の歴史において特筆すべきは、キューバ出身のバンドリーダー、ペレス・プラード楽団による1955年のインストゥルメンタル録音です。このバージョンは、トランペット奏者ビリー・リージスがフィーチャーされており、音程を滑らかに上下させる独特のトランペット演奏が大きな特徴となっています。この演奏はリスナーに強い印象を与え、楽曲の代表的なイメージを決定づけました。

ペレス・プラード版は、リリースされるやいなや爆発的なヒットを記録しました。アメリカの権威ある音楽チャート『ビルボード』では、実に10週間連続で第1位という驚異的な記録を打ち立て、その年の年間チャートでも栄光の第1位を獲得しました。この成功により、楽曲はゴールドディスクに認定され、ポピュラー音楽史における金字塔の一つとなりました。

また、ペレス・プラード楽団は、同1955年に公開されたジェーン・ラッセル主演の映画『海底の黄金（Underwater!）』のためにこの楽曲を提供し、作中のダンスシーンで使用されました。これがきっかけとなり、楽曲はさらに多くの人々に知られることとなります。

各国での成功と多様なバージョン

アメリカ国内では、ペレス・プラード楽団のインストゥルメンタル版が大ヒットする一方で、歌入りのバージョンも人気を博しました。中でもアラン・デールによる歌唱版は、1955年のビルボードチャートで最高14位にランクインしています。

イギリスにおいてもこの楽曲の人気は高く、1955年のうちに二つの異なるバージョンがシングルチャートの首位を獲得しています。まず、ペレス・プラード版が2週間にわたり1位を維持しましたが、そのわずか半月後には、イギリスのトランペット奏者エディ・カルヴァートによるインストゥルメンタル版が代わって首位に立ち、こちらは4週間連続でその座を守りました。

その後も、この楽曲は時代やジャンルを超えて多くのアーティストにカバーされ続けています。1961年にはジェリー・ムラーズ・ハーモニキャッツがアルバムの表題曲として、1965年にはトランペット奏者のアル・ハートが自身のアルバムに収録。1982年には、イギリスのポップグループ、モダン・ロマンスが新たな歌入りバージョンでイギリスのチャートトップ20入りを果たしました。フィリピンではパット・ブーンによる1960年のボーカル版が大ヒットしています。

これらの他にも、ビング・クロスビー、ザ・ベンチャーズ、ザビア・クガート、ジェームス・ラスト楽団など、多岐にわたるジャンルの著名なアーティストたちがそれぞれのスタイルでこの名曲を演奏しており、その enduring な魅力を証明しています。

ポピュラー文化における影響

ペレス・プラード版は、先述の『海底の黄金』に加え、1989年の映画『私のパパはマフィアの首領』や『Parents』でも使用されるなど、様々な映像作品のサウンドトラックとしても頻繁に用いられました。また、日本では、国民的なコメディアンであった志村けんが、ザ・ドリフターズのコントの中で衣装を脱ぐ際などの印象的なBGMとして使用したことで、特に多くの日本人に記憶されています。

「Cerisiers Roses et Pommiers Blancs」は、そのキャッチーなメロディと情熱的なリズムによって、作曲から70年以上経った現在でも、ダンスミュージックやインストゥルメンタル曲のスタンダードとして、世界中の人々に愛され続けている楽曲です。

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