チェリー・ボンブ

1976年、女性のみで構成されたロックバンド、ザ・ランナウェイズは、彼女たちの名を冠したデビューアルバム『The Runaways』（邦題：『悩殺爆弾〜禁断のロックン・ロール・クイーン』）をリリースしました。このアルバムからシングルカットされたのが、「チェリー・ボンブ (Cherry Bomb)」です。パンクのエネルギーを取り込んだハードロックサウンドを持つこの曲は、バンドの初期を象徴する代表曲となりました。日本では当初「悩殺爆弾」というタイトルで紹介されましたが、後に原題に近い「チェリー・ボム」として広く知られるようになりました。

制作背景

この楽曲の誕生には、興味深いエピソードがあります。共同制作者は、バンドのギタリスト兼ボーカリストであったジョーン・ジェットと、当時のマネージャー、キム・フォーリーです。2005年に制作されたドキュメンタリー映画『Edgeplay: A Film About the Runaways』の中で、フォーリーとリードシンガーのチェリー・カーリーは、その制作経緯について証言しています。それによると、「チェリー・ボンブ」は、カーリーがバンドに加入するためのオーディションが行われた際に、急遽書き上げられた曲だというのです。カーリーが歌いたいと希望していた曲を、メンバーが演奏できなかったため、彼女の才能を見極めるためだけに、短時間で制作されたのでした。

評価とチャート

「チェリー・ボンブ」は、発表後もその評価を高めていきました。音楽専門チャンネルVH1が選定した「最も偉大なハードロック曲100」では、52位にランクインする名誉を得ました。アメリカ合衆国のビルボード誌においては、惜しくも主要なHot 100チャート入りは逃したものの、「Bubbling Under Hot 100」（惜しくも100位圏外となった楽曲リスト）で106位を記録し、注目を集めました。

多様な再録音

オリジナル発表後も、この楽曲は様々な形で再演されています。ジョーン・ジェットは、自身のバンドであるザ・ブラックハーツとともに、1984年のアルバム『Glorious Results of a Misspent Youth』（邦題：『誘惑のブラックハート』）でこの曲をセルフカバーしました。また、リードシンガーを務めたチェリー・カーリーも、双子の姉マリー・カーリーと共に再録音を行い、1997年に再発売されたアルバム『Messin' with the Boys』に収録しています。

大衆文化への浸透

「チェリー・ボンブ」の力強いサウンドと反骨精神は、時代を超えて多くの映画、テレビ番組、ゲームなどで使用され、大衆文化の中に深く浸透しています。その主な例は以下の通りです。

1976年のテレビ映画『Dawn: Portrait of a Teenage Runaway』
1993年の青春映画『Dazed and Confused』（サウンドトラックアルバムにも収録）
2010年のビデオゲーム『Guitar Hero: Warriors of Rock』（ジョーン・ジェット＆チェリー・カーリーによる再録音バージョン）
2012年のゲーム『ロリポップチェーンソー』（ジョーン・ジェット&ザ・ブラックハーツによるカバーバージョンがメインメニューテーマ）
2006年の映画『RV』（ジョジョ・レヴェスクがコミカルに歌うシーン）
2010年の伝記映画『ランナウェイズ』（主演のダコタ・ファニングとクリステン・スチュワートが劇中でカバー）
チャリティアルバム『Spirit of '73: Rock for Choice』（ジョーン・ジェットがL7をバックに演奏したライブバージョン）
2013年のテレビドラマ『ウェアハウス13 〜秘密の倉庫事件ファイル〜』シーズン4「Runaway」（チェリー・カーリーが出演者と共に演奏）
2014年のマーベル映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』（クライマックスシーンで使用され、サウンドトラックにも収録）
Netflixシリーズ『Chilling Adventures of Sabrina』シーズン2のプロモーション映像（ブラックハーツバージョン）
* テレビアニメ『ザ・シンプソンズ』シーズン30エピソード18

結論

ザ・ランナウェイズの「チェリー・ボンブ」は、女性ロックバンドのパイオニアとしての彼女たちの活動を象徴する楽曲であり、そのエネルギッシュなサウンドと、オーディションをきっかけに生まれたというユニークな背景、そして多岐にわたるメディアでの使用を通じて、今日なお多くの人々に記憶され、影響を与え続けています。

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