チェリー・レッド・レコード

チェリー・レッド・レコード：ネオアコからサッカーまで、幅広い音楽性を彩るイギリスの老舗レーベル

チェリー・レッド・レコードは、1971年、イアン・マクネイとリチャード・ジョーンズらによってロンドンで設立されたイギリスのインディペンデント系レコードレーベルです。レーベル名は、イギリスのブルースバンド、グラウンドホッグスの楽曲から引用されています。

70年代後半から活動を本格化させ、80年代初頭には、その後の音楽シーンに大きな影響を与えるネオアコースティック（ネオアコ）ブームの中核を担うレーベルとして認知されました。エブリシング・バット・ザ・ガール、フェルト、トレーシー・ソーンといった、現在も高い人気を誇るアーティストを輩出しており、日本でもニューウェイヴ全盛期に多くの作品が紹介され、注目を集めました。

近年は、過去のカタログ作品のリイシューや再発盤のリリースを主な活動としていますが、その歴史とアーティストのラインナップは、音楽史における重要な位置を占めています。コーネリアスもアルバム『SENSUOUS』で同レーベルに所属していたことでも知られています。

多彩なアーティストと音楽性

チェリー・レッド・レコードは、ネオアコにとどまらず、多様な音楽性を擁しています。初期のパンク、ポストパンク、インディーポップ、そして電子音楽まで、幅広いジャンルを網羅したアーティストが所属しており、その音楽性の広さがレーベルの特徴となっています。

代表的なアーティストとしては、以下の名前が挙げられます。

エブリシング・バット・ザ・ガール (everything but the girl): スムーズなサウンドと洗練されたメロディーで知られるデュオ。
コーネリアス (Cornelius): 日本を代表する電子音楽家。アルバム『SENSUOUS』を発表。
タイツ (The Tights): チェリー・レッド・レコードと契約した最初のバンド。
デッド・ケネディーズ (Dead Kennedys): パンクバンドとして知られる。
トレーシー・ソーン (Tracey Thorn): エブリシング・バット・ザ・ガールで活動したシンガーソングライター。ソロ活動も精力的に行っている。
マリン・ガールズ (Marine Girls): 80年代初頭のインディーポップシーンを代表するバンド。
ファンタスティック・サムシング (Fantastic Something): インディーポップバンド。
フェルト (Felt): ポストパンク、インディーポップに分類されるバンド。
ベン・ワット (Ben Watt): エブリシング・バット・ザ・ガールで活動したメンバー。ソロとしても活躍。
モノクローム・セット (The Monochrome Set): ニューウェイヴ、ポストパンクバンド。
モーマス (Momus): 実験的な音楽性で知られるミュージシャン。
ルーク・ヘインズ (Luke Haines): 様々なプロジェクトに参加しているミュージシャン。

サッカーへの情熱とユニークなアルバム企画

チェリー・レッド・レコードのスタッフには、熱心なサッカーファンが多く、その情熱がユニークなアルバム企画に繋がっています。設立者であるイアン・マクネイ自身もAFCウィンブルドンのサポーターであり、イギリスのサッカークラブに焦点を当てたコンピレーションアルバムを数多く発表しています。

1989年にリリースされた『4-2-4』というコンピレーションアルバムを皮切りに、プレミアリーグ、スコットランドリーグ、代表チーム、フットボールリーグ・チャンピオンシップなど、複数のリーグやクラブをフィーチャーしたアルバムが制作されました。中には、デビッド・ベッカム、エリック・カントナ、ジョージ・ベストといった伝説的な選手をテーマにした作品もあります。これらのアルバムには、選手自身のコメントや、レーベル所属アーティストの楽曲が収録されているなど、サッカーファンだけでなく音楽ファンも楽しめる内容となっています。

2004年時点で50タイトル以上のサッカー関連アルバムをリリースしており、「世界で最も多くのサッカー・アルバムをリリースしているレーベル」としてその地位を確立しています。

チェリー・レッド・レコードは、音楽性とサッカーへの情熱という、一見すると異なる要素を融合させた独自のスタイルで、音楽業界に独自の道を切り開いてきました。これからも、過去の遺産を大切にしながら、新たな試みに挑戦し続ける、魅力的なレーベルとしてその存在感を示し続けるでしょう。

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