チキソトロピー

チキソトロピーとは

チキソトロピー（thixotropy）は、特定の物質が示す独特な特性で、時間の経過や外部からの力によってその粘度が変化します。この性質は、粘性液体と固体の中間的な振る舞いを持つことから、さまざまな場面で観察されます。また、チキソトロピーは時には「揺変性」や「シキソトロピー」とも呼ばれます。

チキソトロピーの特徴

チキソトロピーの主な特徴は、物質が剪断応力を受け続けると、その粘度が徐々に低下し、液状化することです。逆に、静止状態に戻ると粘度が再び上昇し、最終的には固体のような刺さり具合になります。特に、剪断速度が急激に変化した場合、最終的な粘度に安定するまでに時間がかかります。これにより、チキソトロピーは、多くのタイプの流体や材料において重要な特性となります。

この性質の語源は、ギリシャ語の「thixis」（触れる）と「-tropy」（向く、回る）に由来し、物質が力に対してどのように反応するかを反映しています。

チキソトロピーと擬塑性の違い

しばしば擬塑性と混同されるカテゴリーですが、チキソトロピーは時間による粘度の変化を含む点で異なります。たとえば、練り歯磨きやケチャップは、剪断応力を受けると粘度が低下しますが、時間による変化が乏しいため、厳密にはチキソトロピーとは言えません。

一方で、剪断応力を受け続けるほどに粘度が増す特性を持つものはレオペクシー（逆チキソトロピー）と呼ばれ、これはあまり一般的ではありません。例としては粘土の懸濁液や冷却状態でのアイスクリームの攪拌作業などがあります。

自然界でのチキソトロピーの例

チキソトロピーは自然界でも数多くの例が存在します。例えば、粘土は力を加えることで粘度が変化する性質を持っており、市場でも使用されています。他にも、蜂蜜も条件によってはチキソトロピーを示し、体内の関節滑液もこの特性を有しています。

さらに、地震の際に見られる地盤の液状化は一部この性質の影響かもしれませんが、通常は土壌中の液体が砂粒と分かれて流れる様子として説明されています。

チキソトロピーの応用

チキソトロピーの特性は、さまざまな産業において応用されています。例えば、ゲルインクボールペンのインクは、書き始める際に必要な粘度を持ち、筆圧を加えることで流動性が増します。また、特定の合金は一定の温度条件でチキソトロピーを示すため、静止状態で固体であっても、成型プロセス中には柔らかくなるという特性を活かします。

この他にも、ナポリにある「聖ヤヌアリウスの血」という秘宝がチキソトロピーの性質を持つ液体ではないかという説が存在します。これは、人工物か自然物かは定かではなく、この特性に関する研究は続けられています。

結論

チキソトロピーは、物質が時間や外部の力に応じてその性質を変化させる興味深い現象です。これにより、多くの実用的な用途が生まれています。今後もこの特性についての理解が深まることで、新たな応用が見つかることが期待されます。

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