チスイコウモリモドキ

チスイコウモリモドキ (Vampyrum spectrum)

チスイコウモリモドキは、哺乳類の中で特異な肉食性を持つコウモリの一種です。この種は、哺乳綱・コウモリ目（翼手目）・ヘラコウモリ科に分類され、独自の属であるチスイコウモリモドキ属を形成しています。

分布

チスイコウモリモドキは、中南米に広がる分布を持ち、特にメキシコから南アメリカの北部（ブラジル北部、ペルー、エクアドル、スリナム、ガイアナ）そしてトリニダード・トバゴなどの常緑樹林で見られます。

形態

体長は約13.5 - 15cm、前腕の長さは10 - 11cmであり、大型のコウモリに分類されます。外見はヘラコウモリに似ていますが、吻は滑らかで長く、翼幅は時に1mに達するものもいます。アメリカ大陸においては、オオコウモリの分布がないため、最大級のコウモリとされています。背中は短い体毛で覆われ、多くは暗褐色またはオレンジがかった茶色です。耳は長く、翼は大きく広がって特徴的ですが、尾は非常に短くて見つけにくいです。肉食性ながら、歯の形状は昆虫食の種に似ています。

生態

チスイコウモリモドキは、他のコウモリや小型哺乳類（例えばネズミ）、さらには小型の鳥類や両生類、爬虫類を捕食する肉食者です。彼らは広い翼で空中を巧みに舞い、反響定位を利用して獲物の位置を把握します。捕まえた獲物は、樹上や地面から飛び降りて直接口で捕まえ、その後牙で仕留めます。この幅広の翼は、獲物が大きくても空中で運ぶことを可能にしています。主な天敵としてはフクロウがあり、時にはそのフンからチスイコウモリモドキの遺骸が見つかることもあります。

昼間は樹洞などをねぐらとし、通常5匹ほどの群れで生活します。この群れは主に雌雄のペアにその子供が加わった血縁集団から成り立っています。繁殖は胎生で、通常、一度に一匹の幼獣を産みます。繁殖期は、乾季の終わりから雨季の始まりにかけて行われます。

人間との関係

広い分布を持つものの、チスイコウモリモドキは高次の捕食者であり、元々個体数は少ないため、環境破壊が進む中で絶滅が危惧されています。生息地の破壊は、彼らの生存に直接影響を及ぼすため、保護活動が求められています。

この特異なコウモリの生態を守るためには、生態系の保全が不可欠です。

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