チドリ科

チドリ科鳥類：多様な種と文化との関わり

チドリ科は、チドリ目チドリ科に分類される鳥類の総称です。世界中の極地を除く様々な地域に生息し、海岸、干潟、河川、湿原、草原など、多様な環境に適応しています。多くの種は長距離を移動する渡り鳥としても知られています。

チドリ科の特徴

チドリ科の鳥は一般的に、オスの方がメスよりもやや体が大きいです。多くの種で、上面と下面の羽毛の色が大きく異なり、この非連続的な色彩パターンが、周囲の環境に溶け込み、捕食者から身を守る保護色としての役割を果たしていると考えられています。

頭部は丸みを帯び、目は大きく、嘴は比較的短いです。後肢は発達しており、素早く走ることができ、多くの種では第1趾（親指にあたる趾）が退化しています。この発達した後肢は、地表を素早く走ったり、獲物を捕らえる際に重要な役割を果たしています。

チドリ科の生態

チドリ科の鳥は、主に動物食で、昆虫、甲殻類、貝類、ゴカイなど、地表で見つけた様々な小動物を食べています。採餌行動としては、地表で獲物をついばんだ後、少し移動してまた採餌するという行動を繰り返すことが多いです。

繁殖期には、地表に簡単な窪みを掘っただけの巣を作り、1回に2～6個（主に4個）の卵を産みます。抱卵は、主にオスとメスが交代で行います。

チドリ科の分類：複雑な系統関係

チドリ科の分類は、近年の分子系統学的研究により、従来の分類体系とは異なる新たな知見が得られています。伝統的なチドリ科は単系統群ではなく、複数の系統を含んでいることが明らかになっています。

例えば、ムナグロ属は、他のチドリ科の鳥とは異なる系統的位置にあるため、単型のムナグロ科として分離する分類が提唱されています。また、マゼランチドリは、系統的にチドリ科から離れており、単型のマゼランチドリ科として分類されています。

マダラゲリは、かつては単型の属に分類されていましたが、その後、タゲリ属に統合されたり、再び分離されたりと、その分類上の位置付けは依然として議論の余地があります。コバシチドリ属も、かつては2種が含まれていましたが、現在は1種のみとなり、チドリ属に含めるべきかどうかも議論されています。

このように、チドリ科の分類は複雑で、今後の研究によってさらに変更される可能性があります。

チドリ科の歴史と分類体系

過去には、現在のチドリ科よりも広い範囲の鳥類をチドリ科に含める分類体系もありました。シギ科、ミヤコドリ科、タマシギ科、レンカク科、セイタカシギ科などが、チドリ科に含まれることがありましたが、現在の分類では、これらは別々の科あるいは亜目に分類されています。

Wetmore (1960) の分類体系では、現在のチドリ科に近い分類が提唱されましたが、それでもマゼランチドリなどは含まれていました。Sibley & Ahlquist (1990) は、さらに広い範囲をチドリ科として、チドリ亜科とセイタカシギ亜科に分類していました。

チドリ科の属と種

国際[[鳥類学会議]] (IOC) の分類によると、狭義のチドリ科には10属（ムナグロ科を除く）約67種が含まれ、日本にはそのうち12種が生息し、5種が繁殖しています。本稿では、ムナグロ科を狭義のチドリ科から分離し、コバシチドリ属をチドリ属から分離した分類を採用しています。

人間とチドリ科の関わり

チドリ科の鳥は、古来より人間の生活と深く関わってきました。卵や肉は食用とされることもありますが、開発による生息地の破壊、乱獲、外来種による捕食などによって、生息数が減少している種も少なくありません。

日本においては、「千鳥」という呼び名は、古くから野山や水辺に群れる小鳥を指す一般的な名称として親しまれてきました。万葉集にも多くの歌が詠まれ、箏曲や胡弓曲、童謡など、様々な音楽作品にも題材として登場します。また、「波に千鳥」という文様は、着物や日用品のデザインとして広く用いられています。さらに、建築業界では、釘や継ぎ目を交互にずらして配置することを「千鳥配置」と呼ぶなど、様々な場面で「千鳥」という言葉が使われています。

参考文献

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