チャイナデイリー

チャイナデイリー：中国共産党の視点を世界に伝える英字日刊紙

チャイナデイリー（China Daily）は、中国共産党中央宣伝部が発行する英字日刊紙です。中国で最も発行部数の多い英字新聞であり、その影響力は中国国内に留まらず、国際社会にも及んでいます。

概要

チャイナデイリーは、中国の主要都市に加え、ニューヨーク、ロンドンなどの海外主要都市にも支局を持ち、アメリカ、香港、ヨーロッパにもサテライトオフィスを展開しています。同紙は「チャイナ・ウォッチ」という別冊を制作し、『ニューヨーク・タイムズ』、『ウォール・ストリート・ジャーナル』などの有力紙に折り込んで配布するなど、その広報活動は積極的です。日本では、毎日新聞が「チャイナ・ウオッチ」を配布しています。

中国国内では、外交官、駐在員、観光客、そして英語を学びたい中国人を主な読者層としています。中国の政策や中国共産党の立場を知るための重要な情報源として、その役割を果たしています。しかし、一部の学者からは「中国のパブリック・ディプロマシーの道具」と指摘されることもあります。

編集方針

チャイナデイリーの編集方針は、他の中国メディアと比較すると若干リベラルであると言われていますが、基本的には中国共産党の意向に沿った報道を行っています。過去には、六四天安門事件について肯定的報道を行い、SARS流行時には『人民日報』よりも批判的で事実に基づいた報道を行ったこともあります。

しかし、習近平政権下では、民主主義に対する否定的な論調が増え、西側諸国の民主主義を批判する記事が多くなっています。また、中国共産党中央宣伝部によるコントロールを受けており、記事の内容は政府の意向に沿うように調整されています。同紙の元編集者も、自身の役割を「プロパガンダを英語として読めるように調整すること」と表現しています。

歴史

チャイナデイリーは、1981年6月1日に創刊されました。中国初の全国紙である英字日刊紙として、当初は2万2千部からスタートしましたが、翌年には6万5千部にまで増加しました。1983年には北米版の配信を開始し、アメリカ司法省から外国代理人として登録されることになりました。

その後、1996年にオンライン版、1997年に香港版を創刊するなど、メディア展開を拡大しています。2010年にはタブロイドサイズの汎アジア版である『チャイナデイリー・アジアウィークリー』を創刊し、2012年にはアフリカ版をナイロビで創刊しました。これらの展開は、中国の影響力を世界に拡大するための戦略の一環と見られています。

しかし、チャイナデイリーは、捏造記事や偽情報の発信も行っており、その信頼性について批判を受けています。2015年にはピーター・ヘスラーが執筆したとする捏造記事を掲載し、2018年にはダボス市長の発言を捏造しました。また、2020年にはインド外務省が、チャイナデイリーによるコメントが国家安全保障補佐官のものと誤認されていると声明を発表しました。このような事例から、その報道姿勢に疑問の声が上がっています。

評価

全般的な評価

チャイナデイリーは、「チャイナ・ウォッチャーにとって必須の読み物」と評価される一方で、「本質的に公的資金で運営されている政府の代弁者」であるという批判も存在します。しかし、一部からは「空想的ではあるが独特の地位」を持っているという評価もされています。

『ニューヨーク・タイムズ』は、同紙の折込広告「チャイナ・ウォッチ」について、「共産党のレンズを通して屈折させた世界情勢について、平凡ではあるが有益な見解を提供している」と評しました。しかし、批判を受けて、『ニューヨーク・タイムズ』などの主要メディアは、「チャイナ・ウォッチ」の掲載を中止しました。

偽情報疑惑

「国境なき記者団」は、チャイナデイリーが検閲とプロパガンダに関与していると非難しています。また、2019-2020年の香港デモに関連する偽情報を発信したとして、多数のメディアから批判を受けています。

チャイナデイリーは、COVID-19パンデミックの起源に関する情報を検閲したり、ワクチンの安全性に関する誤った情報を発信したりしたことも指摘されています。これらの事例から、同紙が偽情報を流布しているという批判が強まっています。

イスラム教徒の描写

チャイナデイリーは、中国のイスラム教徒を「政府の介入によって利益を得る従順で依存的な中国市民」として描いているという批判があります。また、新疆ウイグル自治区における中国政府の政策を擁護する記事を掲載し、ウイグル人大量虐殺を正当化していると批判されています。Twitter社は、この件に関して、チャイナデイリーの記事を再投稿した中国大使館のアカウントを停止しました。

まとめ

チャイナデイリーは、中国共産党の意向を世界に伝えるための重要なメディアであり、その影響力は無視できません。しかし、その一方で、捏造記事や偽情報の拡散、プロパガンダに関与しているという批判も多く、その報道姿勢については注意が必要です。チャイナデイリーを利用する際には、その情報が政府の意向に沿って作られている可能性を考慮し、複数の情報源と照らし合わせる必要があります。

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