チャップリンの寄席見物

チャップリンの寄席見物：酔っ払いの騒動を描く傑作短編

『チャップリンの寄席見物』（1915年）は、チャールズ・チャップリンがエッサネイ社で製作した短編サイレント映画です。チャップリンの映画出演48作目にあたる本作は、彼の監督・主演作品であり、得意とする「酔っぱらいもの」のジャンルに属します。

あらすじ：劇場を舞台にした大騒動

物語は、酔っ払ったペスト氏（チャップリン）が劇場に現れるところから始まります。彼は座席を転々と移動し、騒ぎを起こして劇場からつまみ出されますが、すぐに舞い戻ってきます。ロビーでは太った女性を噴水に突き落とし、特別席にいる女性にちょっかいを出すなど、やりたい放題です。

一方、二階桟敷には同じく酔っぱらいのラウディ氏（チャップリン二役）がいます。彼は特別席のエドナらにビールをかけたり、舞台にトマトを投げつけたりと、こちらも大暴れ。ついには、火食い術の奇術師に消火ホースで水をかけるという騒ぎを起こします。

舞台『唖鳥』の翻案

本作は、チャップリンがフレッド・カーノー劇団時代に演じていた成功作『唖鳥』(Mumming Birds) を翻案したものです。ストーリーの大筋は『唖鳥』と同一ですが、ロビーと観客席のシーンが追加されています。

カーノーから翻案の許可を得た記録や、カーノーが抗議した記録は見当たらず、チャップリンが自身の信念に基づいて翻案したと考えられています。

未完の長編喜劇『生活』との関連

当時チャップリンは、『生活』という長編喜劇の製作にも取り組んでいました。『チャップリンの掃除番』の頃から断続的に製作されていたようですが、完成には至りませんでした。

『生活』の未使用フィルムは、後にチャップリンの不承認作品『三つ巴事件』（1916年）に転用されています。

ラストシーンの再利用

ラストの放水シーンは、後の「ニューヨークの王様」で、シャドルフ王が米非活動委員会の裁判に出席する際に、エレベーターのホースに指を入れて抜けなくなった時、火事と誤解した係員が放水して騒ぎになるというシーンでトーキーで再現されました。その前にはキーストン時代の「チャップリンの道具係」のラストでも同様の演出が見られます。

キャスト

ペスト氏 / ラウディ氏（二役） - チャールズ・チャップリン
特別室の婦人 - エドナ・パーヴァイアンス
特別室の婦人 - シャーロット・ミノー
太ったいたずら小僧 - ディー・ランプトン
特別席の紳士 / 手品師（二役） - レオ・ホワイト
二階桟敷の男 - ウェズリー・ラッグルズ
指揮者 - ジョン・ランド
ミュージシャン・歌手（二役） - ジェームズ・T・ケリー
ミュージシャン - パディ・マグワイア
ロビーの太った女性・蛇つかい（二役） - メイ・ホワイト
* エドナの夫・歌手 - バド・ジェイミソン

日本語吹替版

本作はサイレント映画ですが、チャップリンのデビュー100周年を記念して、スターチャンネルで日本語吹替版が製作されました（日本チャップリン協会監修）。

まとめ

『チャップリンの寄席見物』は、チャップリンの才能が凝縮された傑作短編です。劇場を舞台にした騒動と、チャップリンのコミカルな演技をぜひお楽しみください。

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