チャップリンの役者

チャップリンの役者（His New Job）

『チャップリンの役者』は、1915年に公開されたチャールズ・チャップリン監督・主演の短編サイレント映画です。この作品は、チャップリンがキーストン社からエッサネイ社へ移籍後、初めて製作された記念すべき作品であり、彼の映画出演としては37作目にあたります。オリジナルタイトルが「彼の新しい仕事（His New Job）」と名付けられたことからも、新たな環境でのスタートを切ったチャップリンの意気込みが感じられます。

あらすじ

物語は、チャーリーがルックストーン・スタジオで裏方の仕事を得るところから始まります。しかし、彼は大道具と格闘したり、俳優たちに迷惑をかけたりと、スタジオ内を大混乱に陥れます。当初、チャーリーは将来的に俳優として採用されることが約束されていましたが、彼はサイコロゲームに夢中になってしまいます。やがて映画製作が再開され、メロドラマ的なシーンの撮影中に、チャーリーと仲間のエキストラ（ベン・ターピン）が監督を巻き込んだ大騒動を繰り広げるという展開です。

製作の背景

キーストン社からエッサネイ社へ移籍したチャップリンは、シカゴにあるエッサネイ社の本社と撮影所に到着します。しかし、映画製作に対する姿勢がキーストン社に比べて大きく劣っていることに失望します。幸い、ベン・ターピンやレオ・ホワイトといった才能ある俳優が所属していたことが救いでした。また、後のハリウッド女優グロリア・スワンソンやアグネス・エアーズも端役で出演していますが、スワンソンの演技はチャップリンを失望させました。しかし、スワンソンは後にチャップリンに対し、「ドラマ女優になりたかったから、ああいう態度をとった」と釈明しています。こうして、新しい役者や衣装を揃え、撮影所のセットや小道具をそのまま利用して製作されたのが、この『チャップリンの役者』でした。

エッサネイ社は、チャップリンとの契約交渉の際、「週1250ドルのギャラと1万ドルのボーナス」を提示していました。しかし、シカゴに到着してもギャラやボーナスが支払われる気配はなく、チャップリンはエッサネイ社の幹部たちに不信感を抱くようになります。特に、ジョージ・K・スプアという人物は、チャップリンに渡すはずの金を持って逃げ回るなど、懐疑的な態度を取りました。その後も、チャップリンがエッサネイ社を離れた後も、スプアは『キッド』（1921年）の配給権やチャップリンの母ハンナの事情を利用して違約金を搾り取ろうと画策していました。一方、『大列車強盗』（1903年）の主演俳優であるギルバート・M・アンダーソンとは比較的良好な関係を築き、ジェス・ロビンスからの強い推薦でアンダーソンは獲得したと、チャップリンはのちに聞かされます。

『チャップリンの役者』は、製作前から65本分のプリント発注を受けていましたが、最終的には倍の130本もの発注を受けるほどの大ヒット作となりました。しかし、この成功はチャップリンにとって慰めにはならず、スプアの影響力が強いシカゴを離れ、アンダーソンが仕切るカリフォルニアのエッサネイ社ナイルズ撮影所へ移ることを決意します。この決断が功を奏し、チャップリンは次作のために女優を探していたところ、エドナ・パーヴァイアンスという魅力的な女性を発掘することになります。

また、本作はチャップリンがカメラマンのローランド・トザローを初めて起用した作品でもあります。トザローはその後、『ライムライト』に至るまで、チャップリンのアメリカでの多くの作品でカメラマンまたは撮影顧問を務めることになります。

キャスト

チャールズ・チャップリン - 映画のエキストラ
ベン・ターピン - 映画のエキストラ
シャーロット・ミノー - 映画スター
レオ・ホワイト - 俳優
ロバート・ボルダー - 撮影所支配人
チャールズ・インズリー - 映画監督
ジェス・ロビンス - カメラマン
ビリー・アームストロング - エキストラ
アーサー・W・ベイツ - 大工
チャールズ・J・スタイン - 映画監督
グロリア・スワンソン - 速記者
アグネス・エアーズ - 秘書

日本語吹替

2014年11月2日にスター・チャンネルで初回放送されました。チャップリンのデビュー100周年を記念し、日本チャップリン協会の監修のもと、スターチャンネルで日本語吹替版が製作されました。

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