チャペル& Co.

チャペル& Co.の歴史と影響

チャペル& Co.（Chappell & Co.）は、イギリスの音楽出版およびピアノ製造において伝説的な存在となった企業です。この会社は1810年、サミュエル・チャペルにより設立されました。彼は、音楽教授フランシス・タットン・ラトゥールやロンドンで名を馳せた作曲家・ピアニストのヨハン・バプティスト・クラーマーと共に、初期の基盤を築きました。

設立当初、チャペルはボンド・ストリートに店舗を構え、ここは楽器や楽譜の販売だけでなく、貸し出しも行われる広い展示スペースとなりました。この店舗は、すぐに目立つ存在と化し、音楽愛好家や演奏者の集まる場所となりました。また、サミュエル・チャペルは、ロイヤル・フィルハーモニック協会の設立にも貢献し、音楽界においてもその地位を確立しました。

1819年には、著名な作曲家ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンがチャペルに彼の作品を出版してほしいと名指しで言及するほど、その評判は高まりました。サミュエルの死後、長男ウィリアム・チャペルが経営を引き継ぎました。彼は1843年頃にクラーマー& Co.と提携し、その後はパーシー協会や音楽古物研究協会の設立にも手を伸ばしました。

ウィリアムの死後、その弟トーマスが会社を受け継ぎました。トーマスは、音楽出版と演奏会の主催に注力し、1840年代からはピアノ製造にも乗り出しています。また、彼はセント・ジェームズ・ホールで毎週行われるポピュラーコンサートを提案し、サミュエル・アーサー・チャペルがうまく運営しました。このコンサートは1901年まで続きました。

トーマスが推進した出版事業には、ギルバート・アンド・サリヴァンのオペラやアーサー・サリヴァンの其他の楽曲、さらにはグノーのオペラ『ファウスト』、バルフの『ボヘミアの少女』の出版が含まれ、これらは誇り高い業績として評価されています。トーマスはまた、王立音楽大学の最初のディレクターやロイヤル・アルバート・ホールの初代支配人としても知られています。

20世紀に入ると、チャペル社はイギリスの音楽出版社として一流になり、またピアノ製造業者としても注目を集めました。しかし1964年には不幸な火災に見舞われ、建物が破壊されてしまいました。その後再建され、1970年代の終わり頃には、ロジャース&ハマースタイン作のミュージカル作品を出版する世界的な音楽出版社となりました。

1980年には小売部門を売却し、音楽出版に専念することを決定しました。ロンドンのボンド・ストリートの店舗は、その後ケンブル& Co.によって購入され、「チャペル・オブ・ボンド・ストリート」という名称で運営されるようになりました。最終的に、チャペル& Co.の出版部門は1987年にワーナー・ミュージック・グループに買収され、ワーナー/チャペル・ミュージックとして新たにスタートを切りました。

チャペル& Co.の影響は、ただ音楽の出版にとどまらず、イギリスの音楽文化全体の発展にも寄与し続けています。

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