チャムロン・シームアン

チャムロン・シームアン

チャムロン・シームアン（タイ語: จำลอง ศรีเมือง、英語: Chamlong Srimuang、中国名: 盧金河）は、1935年7月5日に生まれたタイ王国の著名な政治家、宗教家、そして元軍人です。

生い立ちと軍歴、政治への転身

彼の両親は中国の山東省からタイに移住した移民でした。チャムロン氏はタイ陸軍士官学校で学び、軍人としてキャリアを積み重ね、最終的に少将の階級に達しました。しかし、彼は軍でのキャリアを離れ、政治の世界へと足を踏み入れることになります。この転身は、その後のタイ政治に大きな影響を与えることとなります。

パランタム党の創設と仏教への傾倒

政治家として、チャムロン氏はパランタム党を自ら設立し、その党首として活動しました。この党は、従来のタイの政治勢力とは一線を画す存在でした。また、彼は特定の仏教集団であるサンティアソークの熱心な支持者としても広く知られており、その宗教的な信念は彼の政治思想や行動にも色濃く反映されていると言われています。

主要な役職と民主化運動における役割

彼はバンコク都知事や副首相といった要職を歴任し、首都バンコクの行政や国政において影響力を行使しました。特に、チャムロン氏は一貫して反強権政治の立場を取り、タイの民主化運動において指導的な役割を果たしました。その最も顕著な例は、1992年に軍出身であった当時のスチンダー首相に対する民主化要求運動（後に「暗黒の5月事件」として知られる）を主導したことです。この運動は、タイにおける民主主義の進展において重要な転換点となりました。

タクシン政権以降の対立と複雑な関係

21世紀に入り、タイの政治を大きく揺るがしたタクシン・シナワット元首相を巡る一連の政治対立においては、チャムロン氏は明確に反タクシン派の旗頭の一人となりました。しかし、彼のタクシン氏との関係は一筋縄ではいきません。興味深いことに、実業家から政治家へと転身し、後にタイの政治に絶大な影響力を持つことになったタクシン・シナワット氏の政界入りが、1994年のパランタム党への入党から始まった点です。そして、その入党を可能にしたのは、他ならぬ当時のパランタム党党首であったチャムロン氏自身であったと言われています。これは、かつて自身が政界へと導いた人物と、後に激しく対立するという、タイ政治の複雑さを象徴するエピソードと言えるでしょう。

民主市民連合（PAD）への影響

さらに、2008年末にバンコクの主要国際空港であるスワンナプーム空港を占拠・閉鎖するという前代未聞の行動に出たことで世界に衝撃を与えた民主市民連合（PAD - People's Alliance for Democracy）についても、その動きの背後にはチャムロン氏の一定の影響力が存在したと見られています。PADは、タクシン氏とその支持勢力に対抗するために結成された市民運動であり、チャムロン氏の反タクシンという政治的スタンスと共鳴する部分が多くありました。

まとめ

チャムロン・シームアン氏は、軍人、政治家、宗教家という多様な顔を持ち、タイの現代史において、民主化運動の指導者として、また複雑な政治対立のキーパーソンとして、常に重要な位置を占めてきました。彼の存在は、タイ政治のダイナミズムと、過去の人間関係が現在の対立にどのように影響を与えるかを示す好例と言えます。

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