タクシン・シナワット

タクシン・シナワット：タイの激動を象徴する人物

タクシン・シナワット（Thaksin Shinawatra）は、タイの政治と経済に大きな影響を与えた人物です。実業家、政治家としての顔を持ち、タイの首相を務めた経験があります。

生い立ちと初期のキャリア

1949年、タイ北部のチェンマイで客家華系タイ人の名門シナワット家に生まれました。警察官僚としてキャリアをスタートし、タイ王国警察士官学校を首席で卒業後、内務省警察局に任官。アメリカ留学を経て刑事司法の博士号を取得しました。警察官僚としての最終階級は警察中佐でしたが、後にプラユット政権によって剥奪されています。

警察官僚としての給与が低かったため、副業としてシルク販売や映画事業を手掛け、巨額の富を築きました。その後、携帯電話会社AISを設立し、大成功を収めます。これにより、シナワット家はタイ屈指の富豪となりました。

政治家としてのキャリア

1994年、パランタム党に入党し、政治活動を開始。外務大臣に任命されるも、大企業株主が大臣になれない憲法規定により辞職。その後、タイ愛国党を創設し、2001年に首相に就任しました。

タクシンは、出身地であるタイ北部の利権を拡大する政策を進め、低所得層に支持される一方、旧来のエリート層や軍部との対立を深めました。低額医療制度などのバラマキ政策は、貧困層からの人気を集めましたが、その一方で、批判も多くありました。

辞任と亡命

2006年、タクシン一族によるシン・コーポレーション売却益への課税をめぐり批判が噴出。下院を解散し、総選挙を実施しましたが、野党がボイコットし、混乱が生じました。国王に退陣を表明し、休養に入りましたが、実際には暫定首相として職務を続け、国民の反発を招きました。同年9月にはクーデターが発生し、タクシンは事実上の亡命生活を送ることになりました。

その後、イギリス、モンテネグロ、ニカラグア、ウガンダなど様々な国を転々としました。2008年には一時帰国しましたが、再び出国し、ビザ停止や裁判での有罪判決により、タイに戻れない状況が続きました。

帰国と恩赦

2023年8月、タクシンはタイに帰国し、汚職罪などで一時拘置されました。その後、健康問題を理由に警察病院に移送され、国王に恩赦を申請し、減刑を受けました。2024年2月には仮釈放されています。

帰国後のタクシンは、全国各地を行脚し、外交にも関与するようになり、タクシン派の政権運営を支援する動きを見せています。しかし、過去のクーデターに関する発言が不敬罪にあたるとされ起訴されるなど、依然として政治的な不安定要素となっています。

政策の特徴

タクシンの政策は、大胆かつ特徴的です。

経済政策: 公的資金を大量に投入するタクシノミックスを推進し、地方におけるインフラ整備を重視しました。
社会政策: 健康保険制度の整備や30バーツ医療などを実施し、低所得者層の生活改善に貢献しました。
その他: 性風俗店の取り締まりや麻薬取り締まり強化などの政策も行いました。
外交: アメリカには友好的な態度を取りつつ、内政干渉には断固として抗議しました。また、全アジアの統合を目指した「アジア協力対話」を設立しました。

「タイ航空機炎上事件」

2001年3月、タクシン首相が搭乗予定だったタイ国際航空機が炎上する事件が発生しました。当初、テロの可能性も疑われましたが、最終的な原因は特定されていません。

現代への影響

タクシン・シナワットは、タイの政治と社会に大きな影響を与え続けています。彼の政策は、貧困層の支持を集めましたが、同時に、社会の分断を生み出したという批判もあります。現在でも、タクシン派と反タクシン派の対立構造は、タイ政治の根深い問題となっています。

タクシンは、タイ政治の複雑さとダイナミズムを象徴する人物であり、その動向は今後も注目されます。

関連人物

インラック・シナワット：妹で元タイ首相
ペートンターン・シナワット：次女で現タイ首相

参考情報

タクシン・シナワット - Wikipedia
Thaksin Shinawatra (@Thaksinlive) - X（旧Twitter）

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