チャルガ

ブルガリア発祥の音楽ジャンル「チャルガ」とは

チャルガは、ブルガリアで生まれた独特な音楽ジャンルです。そのルーツは、バルカン半島の様々な伝統音楽に影響を受け、ロマ音楽やトルコ音楽などの要素をミックスした、大衆向けの音楽として発展してきました。しばしば「ポップ・フォーク」とも呼ばれますが、そのサウンドは、ギリシャ、トルコ、そして旧ユーゴスラビア諸国の音楽をアレンジしたカバー曲など、多様な要素を含んでいます。

チャルガの歴史

「チャルガ」という言葉は、トルコ語の「演奏」や「音楽」を意味する「チャルグ」（çalgı）に由来します。さらに、トルコ語の「音楽家」を意味する「チャルグジュ」（çalgıcı）から派生したブルガリア語の「チャルガジヤ」（Чалгажия、Chalgazhiya）は、独自のスタイルで演奏や歌唱をする音楽家を指します。彼らは、楽譜に頼らず、自身の記憶を頼りにカヴァルなどの楽器を演奏し、パーティーや結婚式で音楽を奏でていました。これらの音楽が、チャルガの土台となっています。

共産党支配下のチャルガ

共産党支配下の冷戦時代、ブルガリアではチャルガは好ましくない音楽とみなされました。共産主義の理念にそぐわないとされ、1980年代には、当時の指導者トドル・ジフコフによって、トルコや西アジアの要素を含むチャルガよりも、「純粋でスラヴ的、国粋的」な音楽が奨励されました。また、激しい腰の動きを伴うダンスや、性的な内容を含む歌詞も、退廃的で非道徳的であると非難されました。

さらに、チャルガはロマ音楽の要素を強く受け継いでおり、ロマの人々によって発展してきた側面から、ロマに対する差別意識が、チャルガへの抑圧の背景にあったとも考えられています。一方、隣国のユーゴスラヴィアでは、独自の社会主義体制の下、チャルガに似た音楽ジャンル「ターボ・フォーク」が発展し、多くのブルガリア人がそのラジオ放送に耳を傾けました。また、ギリシャでは、伝統音楽が現代化した「ライコー」という音楽が生まれ、初期のブルガリアのチャルガと類似した音楽も登場しました。

共産党体制崩壊後のチャルガ

1989年、ジフコフ体制が崩壊すると、文化に対する統制の時代が終わり、チャルガは再び活気を取り戻しました。メディアにも登場するようになり、それまで密かに活動していたミュージシャンたちが注目を浴びるようになりました。初期の代表的な歌手には、Orkester Kristalのトニ・ダチェヴァ、そして「チャルガの母」と呼ばれるグロリア、デシ・スラヴァ、イヴァナなどがいます。また、パイネルは、このジャンルの音楽を大量にリリースし続け、ブルガリアの大手レコード会社へと成長しました。

21世紀以降のチャルガ

2000年頃から、チャルガの人気は、より現代的なポップ・フォークや、ギリシャやセルビアの音楽、そしてヒップホップなどに押されつつあるという見方もあります。しかし、ソフィアやヴァルナなどのナイトクラブや、テレビのミュージックビデオなどでは、チャルガは依然として頻繁に登場し、その人気は根強いものがあります。

ブルガリア社会におけるチャルガの扱い

ブルガリアでは、チャルガとポップ・ミュージックの境界線は曖昧で、ダンスクラブやパブなどでもよく耳にすることができます。チャルガは、伝統音楽をうまく現代の流行音楽に取り込んだ例と言え、多くの人々に支持されています。しかし、同時に、チャルガを嫌う人々も少なくありません。その理由は、チャルガが外国の要素やロマの要素を多く含んでいることや、性的な歌詞が含まれていることなどが挙げられます。

外部リンク

Payner Music
Ara Audio-Video

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