チャールズ・ケンジントン・サラマン

チャールズ・ケンジントン・サラマン（1814年3月3日 – 1901年6月23日）は、ヴィクトリア朝時代のイングランドを代表する作曲家であり、熟練したピアニストとしても知られています。彼は音楽家としてのキャリアに加え、音楽社会の発展に尽力し、また、ユダヤ人としての立場から社会啓発活動も行った多才な人物でした。

サラマンはロンドンで生を受けました。音楽教育は早くから始まり、高名な教師陣、すなわちチャールズ・ニートやウィリアム・クロッチのもとで学びました。10歳という若さで名門の王立音楽アカデミーへの入学を許されたことは、彼の非凡な才能を示す出来事です。その後、彼は音楽の中心地の一つであるパリへ渡り、そこで著名なピアニスト兼作曲家のアンリ・エルツに師事し、さらに研鑽を積みました。パリでの修業を終えたサラマンは、1830年に故郷ロンドンへと戻りました。彼は音楽家として活動する傍ら、ロンドン音楽協会を創設するなど、イギリスの音楽界の組織化にも貢献しました。

作曲家としてのサラマンの作品は、その多くが宗教的な主題、特に聖書の詩編などにインスピレーションを得ています。彼は深い信仰心を作曲の源泉としていました。また、サラマンはユダヤ人としてのアイデンティティを重んじ、当時の社会におけるユダヤ人に対する誤解や偏見を正すための著作活動も行いました。1885年に発表された『Jews as They Are』は、彼のそうした意図を具体的に示した重要な作品です。

彼の音楽作品の中でも特筆すべきは、フェリックス・メンデルスゾーンのオラトリオ『エリヤ』の中から「終りまで耐え忍ぶものは救われるべし」の一節を、ユダヤ教の典礼で用いられる詩篇第93篇のために編曲したものです。この編曲は、ロンドンのスペイン・ポルトガル系ユダヤ人コミュニティーにおいて深く根付き、現在でも安息日の前夜、金曜日の礼拝で頻繁に歌われています。これは、異なる宗教音楽の伝統を見事に融合させたサラマンの音楽的才能と、コミュニティーへの貢献を示す例と言えるでしょう。さらに、彼の作品はキリスト教会の典礼においても重要な位置を占めました。特に、詩篇第84篇に付された彼の音楽は高く評価され、1900年にはウェストミンスター寺院で行われた特別な演奏会において、19世紀を代表する三つの主要な讃美歌の一つとして選ばれ演奏される栄誉に浴しました。これは、彼の作品が宗派を超えて広く認められていた証拠です。

チャールズ・ケンジントン・サラマンは、作曲家、ピアニスト、音楽社会の推進者、そして社会啓発家として、ヴィクトリア朝からエドワード朝初期にかけてのイギリス音楽界と社会に大きな足跡を残しました。彼は1901年6月23日に、その生涯を閉じた地であるロンドンで逝去しました。彼の残した作品や活動は、今日においてもなお、彼の多大な貢献を伝えています。

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