チャールズ・シーモア (第6代サマセット公)

第6代サマセット公チャールズ・シーモア

チャールズ・シーモア（Charles Seymour, 6th Duke of Somerset、1662年8月13日 - 1748年12月2日）は、17世紀末から18世紀にかけてのイギリスを代表する貴族であり、政治家としても活動した人物です。第6代サマセット公爵として知られ、その傲慢な性格から「高慢な公爵」（The Proud Duke）の通称で語り継がれています。トローブリッジのシーモア男爵チャールズ・シーモアを父に、アリントン男爵ウィリアム・アリントンの娘エリザベスを母に持ち、第5代公爵フランシス・シーモアの弟にあたります。また、テューダー朝の大立者である初代サマerset公エドワード・シーモ어の直系であるハートフォード伯エドワード・シーモアの玄孫という名門の血筋を受け継いでいました。

生涯

若くしてケンブリッジ大学のトリニティ・カレッジで学んだ後、1678年に兄フランシスが急逝したことにより、わずか16歳でサマセット公爵位を継承します。彼の人生において特筆すべき転機となったのは、1682年にノーサンバランド伯爵ジョスリン・パーシーの唯一の娘であるエリザベス・パーシーと結婚したことです。この結婚により、シーモアはパーシー家が誇る莫大な財産と広大な所領（ノーサンバランド州のアニック・カースル、ロンドンのサイオン・ハウスやノーサンバーランド・ハウス、ウェスト・サセックスのペットワース・ハウスなど）を手にすることとなりました。さらに、妻エリザベス自身が持っていた多数の爵位と所領も併せて獲得し、これにより彼は一夜にしてイングランド屈指の富裕貴族へと駆け上がりました。

彼の政治キャリアは、富裕な地位を得た後に本格化します。1683年にはイングランド王チャールズ2世から王室の家政に関する職務を委任され、続くジェームズ2世のもとでは1685年に竜騎兵大佐に任じられます。しかし、1688年の名誉革命という政変においては、彼は時のジェームズ2世を見限り、新たな国王ウィリアム3世側につくという機を見るに敏な行動をとりました。

ウィリアム3世とメアリー2世の共同統治時代、1692年にメアリー女王と義妹アンとの間に確執が生じると、シーモアはアンを自身のサイオン・ハウスに受け入れ保護します。この時期、彼と妻エリザベスは、後にマールバラ公となるジョン・チャーチル夫妻や、シドニー・ゴドルフィンといった面々と共にアンとの関係を深めました。1702年にアンが女王に即位すると、シーモアは主馬頭および枢密院議長という要職に就きます（ただし、枢密院議長は同年のうちに交替）。彼はホイッグ党員でありながらも、中道派を率いるトーリー党のゴドルフィンが組織した政権の一員として活動しました。

しかし、彼の政治的立場は常に安定していたわけではありません。1708年頃からは、アン女王の信任を得るようになっていたトーリー党の指導者ロバート・ハーレーに接近し、トーリー党に協力的な姿勢を見せるようになります。これは、彼自身が次の政権において中心的な役割を担うことを企図していたためとも言われています。ところが、1710年の総選挙でトーリー党が勝利を収めるも、シーモアは重要な役職を与えられませんでした。これを受けて彼は再びホイッグ党へと戻ります。翌1711年には、妻エリザベスがアン女王の信任を失わず、ミストレス・オブ・ザ・ローブス（衣服係女官長）という宮廷の要職に任じられるという華々しい立場にあったのとは対照的に、シーモア自身は枢密院から外されるという冷遇を受けます。さらに1712年には主馬頭の職も解任され、以後は野党として活動するようになりました。

1714年、アン女王が危篤に陥り、大蔵卿であったハーレーが失脚するという政治的空白が生じます。この機会を捉え、シーモアは同じホイッグ党員のアーガイル公ジョン・キャンベルと共に枢密院へ介入し、トーリー党のヘンリー・シンジョンが大蔵卿に就任することを阻止しました。そして、アーガイル公および大蔵卿シュルーズベリー公チャールズ・タルボットと共に、ドイツからイギリスへ到着するまでのジョージ1世の政務を担う委員の一人に選出され、再び主馬頭の職に復帰します。しかし、それも束の間、翌1715年には新国王ジョージ1世との関係が悪化し、再び解任されてしまいます。

公職から離れた後は、政治の表舞台に立つことはほとんどありませんでした。1741年に創立された児童養護施設であるファウンドリング・ホスピタルの監督に就任した以外には、特筆すべき公的な活動はほとんど見られません。彼は非常に長命であり、1748年に86歳の高齢でこの世を去りました。

晩年と相続

晩年のシーモアは、彼が築き上げた広大な所領と爵位の複雑な相続問題に直面していました。長男アルジャーノンがサマセット公位を継承しましたが、アルジャーノンの息子である孫ジョージが幼くして亡くなったことで、シーモア家の男系の嫡流は途絶えることになります。結果として、1750年にアルジャーノンが亡くなった際、彼自身が遺産の配分を取り決めていたこともあり、パーシー家由来のノーサンバランド伯位と関連所領は、アルジャーノンの孫娘エリザベスの夫ヒュー・スミソン（後にノーサンバランド公に昇格）に継承されました。一方、サマセット公爵位は、シーモア家傍系の遠縁にあたるエドワード・シーモアへと受け継がれることになります。これら二つの家系は、イギリス貴族として現在も存続しています。

人物像

「高慢な公爵」という通称が示す通り、チャールズ・シーモアは非常に傲慢な人物であったと伝えられています。その傲慢さは、彼の日常生活における様々な逸話となって残っています。例えば、再婚した後妻がうっかり彼に触れただけで、前妻エリザベスと比較して不平を漏らしたり、娘のシャーロットが彼が来た際に着席したままであったため、遺産相続額を2万ポンドも減らしたりした話が伝わっています。また、自身の所有する複数の屋敷間には専用道路を整備させ、馬車での移動時には召使いを先行させて周囲の通行を妨げた上で、停車させずに通過させるなど、その権勢を誇示する行動も数多く見られました。

しかし、一方で彼の政治的手腕については疑問符がつけられています。日和見的な態度から、ホイッグ党・トーリー党のいずれからも完全な信頼を得ることができませんでした。また、ジョージ1世との関係が悪化したことで重要な地位に長く留まることができなかった点は、同時期に政治の中枢で活躍したマールバラ公夫妻と比較すると、政治力に限界があったことを示唆しています。彼がハーレーに協力的な姿勢を見せたのも、単に自分が次の権力者になろうという自己中心的な野心からであったとも言われており、王家と遠縁であることを利用されたという見方もあります。妻エリザベスがアン女王との個人的な関係を通じて影響力を持つのではないかと懸念される一方、シーモア自身は政局の中心にはなりきれなかったのです。

子女

チャールズ・シーモアは二度結婚しています。

最初の妻、エリザベス・パーシーとの間には5人の子女をもうけました。

アルジャーノン（1684年 - 1750年） - 第7代サマセット公爵、初代ノーサンバランド伯爵となる
エリザベス（1685年 - 1734年） - 第7代トモンド伯爵ヘンリー・オブライエンと結婚
キャサリン（1693年 - 1731年） - 第3代準男爵ウィリアム・ウィンダムと結婚
パーシー（1696年6月3日 – 1721年7月4日） - 庶民院議員。生涯未婚
アン（1709年 - 1722年） - 第3代リーズ公爵ペレグリン・オズボーンと結婚

1725年に再婚した、ノッティンガム伯ダニエル・フィンチの娘シャーロットとの間には2人の娘をもうけました。

フランシス（1728年 - 1761年） - グランビー侯爵ジョン・マナーズと結婚
* シャーロット（1730年 - 1805年） - 第3代エイルズフォード伯爵ヘニッジ・フィンチと結婚

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