チャールズ川

チャールズ川：歴史と再生の物語

チャールズ川は、アメリカ合衆国マサチューセッツ州を流れる全長129kmの川です。ボストンマラソンのスタート地点として知られるホプキントンに源を発し、北東へ向かいながら23の都市を経由して、マサチューセッツ湾へと注ぎます。

川の概要

チャールズ川は、80もの渓流と複数の主要な帯水層から水が流れ込み、33の湖や池、35の自治体を潤す広大な流域を持っています。流域面積は約798平方キロメートルに及びますが、水源は河口からわずか42キロメートルしか離れておらず、標高差も107メートルと緩やかです。流域には、下流の水量を調整し、固有種を保護する役割を果たす8,000エーカー以上の湿地保護区が含まれています。

川沿いには、ブランダイス大学、ハーバード大学、ボストン大学、マサチューセッツ工科大学など、名だたる大学が立ち並びます。河口付近は川幅が広がり、ボストンのダウンタウン、ケンブリッジ、チャールズタウンの境界を形成しています。また、チャールズ川遊歩道にはハッチシェルがあり、夏にはコンサートなどのイベントが開催され、特に独立記念日のイベントは有名です。ウォータータウン・ダムからウェルズリー間の流域は、チャールズ川上流保護区として保護されています。

川の歴史

チャールズ川は、かつてネイティブアメリカンによって、交通手段や漁場として利用されていました。17世紀初頭には、探検家ジョン・スミスがこの川を「マサチューセッツ川」と名付けましたが、後にイギリス王チャールズ1世にちなんで「チャールズ川」と改名されました。

流れが緩やかなチャールズ川ですが、初期の入植者は水車小屋に利用しました。1639年には、デダムの入植者がチャールズ川からネポンセット川へ水を流す運河を建設し、水車の動力源としました。この運河は「マザー・ブルック」と呼ばれ、北米最古の運河として、現在も洪水調整に利用されています。

19世紀には、フランシス・カボット・ローエルがウォルサムにアメリカ初の統合化された繊維工場を設立し、チャールズ川流域はアメリカでも有数の工業地帯となりました。その後、多くの水車や工場が川の水力を利用し、19世紀末までには20ものダムが建設されました。しかし、その一方で、工業化は深刻な水質汚染を引き起こしました。

また、1816年から1968年まで、アメリカ陸軍はチャールズ川流域のウォータータウンに兵器工場を操業し、多くの被害をもたらしました。この工場跡地は、後にスーパーファンド適用地となり、環境修復が行われました。

ボストンとケンブリッジの境界

現在のチャールズ川におけるボストンとケンブリッジの境界線は、ほとんどが人工的に設計されたものです。1891年、マサチューセッツ州知事はチャールズ川向上委員会を設立し、チャールズ・エリオットなどの著名なランドスケープアーキテクトが、チャールズ川沿いの公園や自然区域の整備を主導しました。この計画には、チャールズタウンのダムからウォータータウン・スクエアのダムまでの31キロメートルに及ぶ地域に、20か所以上の公園や自然区域が含まれています。

1910年には、現在のボストン科学博物館がある場所にダムが建設され、ボストンからウォータータウンまでの水位が一定に保たれるようになりました。また、干潟が解消され、レベレット・サークルとチャールズゲートの間には堤防が建設されました。遊歩道は、ストロウ記念遊歩道と名付けられ、チャールズ川沿いに多くの公園が整備されました。1950年代には、遊歩道に沿ってハイウェイが建設され、ストロウ・ドライブと名付けられました。

公害と改善の取り組み

産業排水や都市排水が流れ込んだチャールズ川は、かつて深刻な水質汚染に悩まされていました。バーナード・デヴォートは、「チャールズ川は産業排水や廃水で汚染され、油汚れが浮き、悪臭がして不快」と記しています。川の水は、有毒な色に染まることもありました。

かつては水泳の人気スポットでしたが、汚染が進んだため、州は多くの水泳スポットを閉鎖せざるを得ませんでした。しかし、1960年代以降、水質浄化に向けた取り組みが始まり、1965年にはチャールズ川分水協会が設立され、恒久的な浄化活動が行われるようになりました。

1978年には、科学博物館の下流に海水が流れ込まないように、新たなダムが建設されました。1995年には、アメリカ合衆国環境保護庁が2005年までに遊泳可能な水質にする目標を発表し、1996年には、ウィリアム・ウェルド州知事が水質浄化へのコミットメントを示すために、着衣のまま川に飛び込みました。2004年には、クリストファー・スウェインが初めてチャールズ川全域を泳ぎ、川の環境改善を啓発しました。2007年には、50年以上ぶりとなる公認水泳競技会も開催されました。

官民連携による下水道や雨水対策が功を奏し、川の水質は劇的に改善しました。現在では、川全体が泳げる水質にまで回復しています。ただし、大雨の後は、雨水や下水の流入により水質が一時的に悪化することがあります。

カキが川の浄化に使われるなど、様々な取り組みが続けられています。現在、チャールズ川でのボート遊びは許可されていますが、許可のない遊泳は罰金対象となっています。ただし、2013年には、1950年代以来初めて公衆遊泳場がオープンし、許可を得れば水泳を楽しむことが可能になりました。

チャールズ川は、過去の汚染の歴史を乗り越え、市民の努力によって見事に再生した川として、今後も人々に親しまれていくでしょう。

もう一度検索