帯水層

帯水層について

帯水層（たいすいそう、Aquifer）とは、地中の透水層において、地下水によって飽和している地層のことです。この飽和状態の層が、地下水の貯留と移動を可能にする重要な役割を担っています。

帯水層の分類

帯水層は、その透水性、構造、そして地下水のポテンシャル状態によって分類されます。

透水性による分類

透水層: 透水性の高い地層で構成される帯水層を指します。地下水を容易に透過させることができます。
難透水層: 透水性の低い地層で構成される帯水層を指します。地下水の移動を制限します。難透水層は、帯水層の基底を形成することも多く、被圧地下水を貯留する帯水層の上部を構成する場合には「加圧層」と呼ばれることもあります。ただし、この用語は厳密な意味で加圧しているわけではないため、あまり用いられません。また、全く水を通さない地層は「不透水層」と呼ばれます。

構造による分類

層状水 (ポーラスメディア): 砂や礫などの粒子状の地層で構成され、その間隙に地下水が賦存する帯水層です。
裂罅水 (フラクチャーメディア): 難透水性の岩盤中の割れ目（裂罅）に地下水が賦存する帯水層です。

地下水のポテンシャル状態による分類

被圧地下水: 帯水層が上下を難透水性の地層で挟まれ、地下水の水頭が帯水層の上部よりも高い状態の帯水層です。井戸を掘ると、地下水が地表よりも高く湧き出すことがあります。
不圧地下水 (自由地下水): 地下水の水頭が帯水層の上部よりも低い状態の帯水層です。

帯水層の単元区分

帯水層の区分は、水文地質学的な層相区分とほぼ一致します。層相区分とは、地質学的に地層を岩相によって区分することですが、水文学的層相区分では、さらに透水性、岩盤の割れ目、貯留性などの特性も考慮します。しかし、水の貯留は必ずしも層相のみに従うわけではないため、層相区分による帯水層の単元区分は絶対的なものではありません。

帯水層定数

帯水層の性質、すなわち地下水の貯留層としての透水性や資源量を評価する数値として、帯水層定数（または帯水層係数）があります。主な要素は以下の通りです。

透水係数 (K): 単位動水勾配における、単位時間あたりに単位断面積を流れる水の流量。帯水層の透水性を表します。
透水量係数 (T): 被圧帯水層において、単位動水勾配における単位時間あたりに単位層厚の帯水層を流れる水の流量。透水係数と被圧帯水層の層厚の積で求められます。不圧帯水層の場合は、自由地下水面から帯水層基底までの水深と透水係数の積で表されることがあります。
貯留係数 (S): 被圧帯水層と不圧帯水層で定義が異なります。被圧帯水層の場合は、帯水層に貯留された水の圧力を表し、不圧帯水層の場合は、有効間隙率に等しく、重力排水量を表します。
有効間隙率: 帯水層中の間隙のうち、流動に関与する水の割合。流動に関与しない水の割合は比残留率と呼ばれます。

帯水層中の地下水の形態

帯水層に存在する地下水の形状は、地下水の涵養や流出を解析する上で重要です。自由地下水の場合は自由地下水面の形状、被圧地下水の場合はポテンシャル面の形状が解析されます。

地下水瀑布: 地下水が地表に露出して滝のように流れる状態。
地下水谷: 地下水面が谷状になっている状態。

法律上の帯水層の定義

日本では、法律上で地下水や帯水層に対する明確な定義はありません。建設省が過去に「地下水法（案）」で地下水の定義を試みたものの、現在まで法制化には至っていません。

伏流水と地下水

伏流水は、河川の下を流れる水のことですが、帯水層の一部として捉えることもできます。

「地下水脈」という言葉について

「地下水脈」という言葉は、帯水層の意味で使われることがありますが、これは学術用語ではなく、自然科学の分野では使われません。地下水は、脈のように流れているのではなく、地層全体や割れ目に沿って流れています。帯水層の中には、一部のみを水が流れる場合もあります。そのため、「地下水脈」という言葉の使用には注意が必要です。

参考文献

Aquifer （英語） - Encyclopedia of Earth「帯水層」の項目。

関連項目

地下水
井戸
温泉
湧水
水循環
オガララ帯水層（世界最大級の帯水層）
地下水瀑布

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