チョウ (甲殻類)

チョウ（Argulus japonicus）

チョウはウオヤドリエビ綱チョウ目チョウ科に所属する甲殻類で、主に淡水魚に寄生することで知られています。別名ウオジラミとしても知られるこの生物は、一般的に小型で円盤状の薄い体を持ち、吸盤や鈎を用いて宿主にしがみつきます。行動としては、自由に水中を泳ぎ回ることができ、時には宿主から離れることもありますが、この際には3〜5日間生存可能です。発生が特に問題視されるのは、養魚場など魚類が密集している環境で、ここでの繁殖が深刻な被害をもたらすことがあります。

形態の特徴

チョウの体長は通常3〜6mm程度で、ほぼ透明な体表には黒い色素が点在しています。頭胸部は左右に広がり、円盤状の形を形成します。この構造により、全身が吸盤に適応しているのが大きな特徴です。頭部には触角由来の小さな鈎が2対あり、腹側には大きな吸盤が1対存在します。腹部は体節が5つに分かれ、最初の節には顎脚、残りの節には游泳用の附属肢があります。また、尾部は円盤から突き出し、扁平で後端が二股に分かれています。

寄生生活

主な宿主となるのはキンギョ、コイ、フナなどの淡水魚で、寄生する際にはその血液を吸います。このため、宿主の体表には傷ができ、ミズカビなどが侵入しやすくなります。寄生された魚は衰弱し、場合によっては死に至ることもあります。チョウはしばしば宿主の皮膚にとりつき、その姿は鱗のように見えます。産卵は夜間に行われ、卵は水底の石や他の場所に置かれます。1回の産卵で数十から数百の卵を産むことができ、合計で2000個に達する可能性もあります。卵は2〜4週間で孵化し、幼生は成体に似た形状でありながら、初期段階では腹部の附属肢が欠如しています。

分布と生息環境

チョウは日本で初めて発見され、名前の由来となる「japonicus」は日本に由来します。しかし、現在ではユーラシアやアメリカを含む広範な地域に分布していることが確認されています。この広がりは主に魚類の人為的な移動によるものと考えられています。日本においては、北海道や本州（特に東北を除く地域）で記録されており、鹿児島県でも発見されています。

近似種

日本にはチョウに似た他の種も存在します。例えば、チョウモドキ（Argulus coregoni）やモウコチョウ（Argulus mongolianus）などがあります。これらの種は形態こそ似ていますが、特定の特徴によって互いに見分けることが可能です。特に、モウコチョウは頭部の前縁が独特な「凸」型を示すことで識別されます。

養魚業への影響

この寄生虫は養魚家にとって大きな悩みの種で、特にメトリホナートという駆除薬が効果的とされています。しかし、チョウは少数の場合には目立たず、大繁殖する前に手を打たないと、魚全体に甚大な被害を与える恐れがあります。体液を吸うことによる健康への影響があるだけでなく、傷から感染症にかかるリスクも増大します。これにより、養魚業においてはチョウの管理が非常に重要な課題となっています。

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