吸盤

吸盤とは

吸盤とは、ゴムや合成樹脂などの柔軟性を持つ素材を利用し、平滑面に吸着させる器具や部品のことで、吸着盤とも呼ばれます。また、生物が持つ吸着のための器官も吸盤と総称されます。

器具・部品としての吸盤

器具や部品としての吸盤は、皿のような形状をしており、可撓性のあるゴムやプラスチックで作られています。吸盤を対象物に押し当てて内部の空気を抜くことで、吸盤と対象物との間に気圧差が生じ、吸着します。この時、吸盤の弾性が元の形状に戻ろうとする力が、吸着力を高めます。レバーなどで動作させるものもあり、水中でも水圧を利用して作用します。

吸着面と対象物が平滑であるほど吸着力は高まります。金属面やプラスチック、タイルの面は吸盤に適しています。吸着力は吸盤の面積に比例します。

吸盤は、釘や接着剤と異なり、痕跡を残さず、何度も着脱できる利点がありますが、大きな荷重には耐えられません。吸着面と吸盤に油分やゴミが付着していると吸着力が低下するため、事前に脱脂することで接着強度を高めることができます。また、自動車のフロントガラスなどに使用する場合、吸盤の形状によって収れん火災が発生する可能性もあるため注意が必要です。

動物の吸盤

動物の吸盤は、タコが最も代表的な例です。タコの吸盤は、筋肉の力で吸着動作を行います。ハゼの仲間では、腹びれが吸盤として機能します。また、ヤツメウナギ、アルジイーター、ヒル、吸虫などの口も吸盤状になっています。これらの吸盤は、水中での活動に適応したものが多く、自然界にはガラス面のような平滑な面が少ないため、水や粘液が境目を埋める役割を果たしていると考えられています。腹足類が広い足で基盤に吸着するのも、吸盤の原理に基づいています。

ヤモリの指先にある構造は、かつては吸盤とされていましたが、現在では微小な突起構造によるファンデルワールス力を利用していることが明らかになっています。

吸盤を持つ動物の例

アマガエル科
アオガエル科
コバンザメ
ハゼ
ダンゴウオ
アルジイーター
ロリカリア
プレコストムス
ヤツメウナギ
ナマコ・ウニ（管足）
タコ
ヒル
ヒルミミズ
吸虫
吸口虫
チョウ (甲殻類)
イソギンチャク（足盤）
イカ（吸盤はやや原理が異なる）

植物の吸盤

ツタのつるの先端にある、壁面や他の物体に付着するための構造も、一般的に「吸盤」と呼ばれます。しかし、ツタの吸盤は圧力差を利用するものではなく、付着面から基盤の凹凸に突起状の組織を侵入させ、接着剤様の分泌物で隙間を埋めて接着します。そのため、ツタの吸盤は一時的なものではなく恒久的な接着に適しており、平滑な面よりも凹凸のある面に強く付着します。

吸盤は、その原理や構造、生物における役割など、多岐にわたる興味深い現象であり、私たちの生活や自然界において重要な役割を果たしています。

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