チンランド防衛隊

チンランド防衛隊 (CDF)について

チンランド防衛隊（ビルマ語: ချင်းဒေသကာကွယ်ရေးတပ်ဖွဲ့、英語: Chinland Defense Force、略称: CDF）は、ミャンマーで2021年2月に発生した軍事クーデターを受けて、チン州の住民によって組織された武装勢力です。軍事政権への抵抗を目的としています。

当初、CDFは地域ごとに自発的に結成された多数の小規模な武装組織の集合体として出発しました。地域による独立性が非常に高く、統一された指揮系統は存在しませんでした。2021年9月には、これらの多数のCDF組織と、既存の民族武装組織であるチン民族軍（CNA）が連携し、「チンランド共同防衛委員会 (Chinland Joint Defence Committee: CJDC)」が結成されました。後にCDFシインが加わり、CJDC傘下のCDF組織は17となり、チン民族軍と合わせてその総兵力は約1万5,000人に達したとされています。

結成の背景と活動

2021年のクーデター後、ミャンマー全土で軍事政権に対する大規模な抗議運動が巻き起こりました。これに対し、軍事政権は激しい弾圧を開始し、平和的なデモ参加者を逮捕したり、市民の家屋に放火したりするなど、暴力的な手段で鎮圧を図りました。チン州においても同様の弾圧が行われましたが、州内に存在する既存の主要な民族武装組織であるチン民族軍やゾミ革命軍は、当初は目立った行動を起こしませんでした。

このような状況に対し、軍事政権による弾圧に直面し、既存の武装勢力の対応に不満を募らせたチン州の住民たちは、自らを守るために立ち上がりました。彼らは「チンランド防衛隊」を名乗る独自の武装組織を各地で組織し始めました。そして、2021年4月4日、州内の小規模な武装勢力が集まり、正式にチンランド防衛隊（CDF）として統合されました。

結成後、CDFは軍事政権軍との衝突を繰り返すようになります。2021年8月から10月にかけての数ヶ月間だけで、多くの郡区において国軍とCDFの間で少なくとも40件の戦闘が発生したと報告されています。CJDCは、これらの戦闘を通じて少なくとも1,029人の国軍兵士を無力化し、自軍の兵士58人が犠牲になったと発表しました。チン族に古くから根付いている狩猟文化により、伝統的なフリントロック式などの猟銃が比較的容易に入手できたことや、地元に詳しい地理的知識があったことが、彼らの戦闘における優位性に貢献したと分析されています。

組織の変遷と分裂

CJDCによる連携体制は、しばらくの間チン州の反軍政勢力の重要な枠組みとして機能しましたが、組織内部には対立も生じました。2023年12月、チン民族戦線が主導する形で「チンランド評議会」が設立されましたが、これにCDFミンダッ、チン民族防衛隊、PDFゾーランドといった一部の主要なCDF組織は参加しませんでした。彼らは、チンランド評議会がチン民族戦線や国民民主連盟（NLD）によって支配されていると批判しました。

この内部対立は、CJDCの解散へと繋がりました。チンランド評議会に参加しなかったPDFゾーランド、CDFミンダッ、チン民族防衛隊は、独自に「チン兄弟同盟」を結成しました。その後、マラランド防衛隊、CDFカンペレッ、CDFマトゥピ第1旅団といった他のCDF組織もチン兄弟同盟に加わっています。一方で、CDFマトゥピ第2旅団はチンランド評議会側に留まるなど、CDF組織は複数の派閥に分かれて対立を深めました。

チンランド評議会を支持する勢力とチン兄弟同盟との間の緊張は高まり、チン兄弟同盟がチン民族軍（CNA）に対して、自身が結成した同盟領域への侵攻を行わないよう公に警告する事態に発展しています。

目的と兵器

チンランド防衛隊の主な目的は、軍事政権による弾圧から市民を保護することです。また、2008年憲法の廃止、現在の軍事政権の打倒、そして将来的なミャンマーにおける真の連邦制民主主義国家の樹立を目指しています。

CDFが使用する兵器は多岐にわたりますが、主に小型の武器が中心です。M-16やAK（カラシニコフ）、国産のMA-1といったアサルトライフルや、前述の通り伝統的なマスケット銃式の猟銃などが用いられています。M-16やAK-47といった高性能なライフルの一部は、国外からの密輸によって入手されているとされています。

チンランド防衛隊は、ミャンマーの民主化運動における重要な武装勢力の一つであり、複雑な内部構造と外部勢力との連携・対立の中で活動を続けています。

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