ツァーリ・ボンバ

ツァーリ・ボンバ（露: Царь-бомба、英: Tsar Bomba）は、ソビエト連邦が冷戦期に開発した最大出力を持つ水素爆弾です。この爆弾は、人類史上最も強力な兵器として知られ、1961年に実施された唯一の大気圏内核実験でその存在が証明されました。

基本情報

ツァーリ・ボンバの正式名称はAN602で、開発時のコードネームは「イワン」（Иван）でした。他に「RDS-220」や「RN220」といった別称もありますが、これはキリル文字からの翻字です。また、西側諸国では「爆弾の皇帝」という意訳から「ツァーリ・ボンバ」と呼ばれるようになりました。

背景と開発経緯

1950年代半ばから60年代初頭にかけて、アメリカの核兵器配備に対抗するため、ソ連は自国の核開発を急ぎました。当時のリーダーたちはアメリカに対する圧力と威圧を強めるため、この新しい水爆の開発を進めました。フルシチョフは1961年に実験日の設定を指示し、冷戦の緊迫した状況の中でツァーリ・ボンバの存在が注目を浴びることになりました。

設計と特徴

ツァーリ・ボンバは、RDS-37を元に開発されたもので、さらにRDS-202の設計も踏襲しています。この爆弾は、核分裂と核融合の三段階反応により最大100メガトンの威力を持つことが計画されていましたが、実験時には出力を50メガトンに制御されました。

設計チームはソ連の核開発都市で工作し、アンドレイ・サハロフなどが関与していました。特に、爆発の制御においては精密な同期爆発ユニットが開発され、異常な威力を実現しました。

実験の準備

ツァーリ・ボンバは、改造されたTu-95爆撃機によって投下されることが決定しました。この実験では、安全に投下機を退避させるための大型のパラシュートも設置されました。

投下とその影響

実験は1961年 10月30日に実施されました。爆弾がノヴァヤゼムリャの上空で投下されると、10,500メートルの高度で爆発しました。爆発の影響は計り知れず、衝撃波は地球を3周し、火球は1,000キロメートル以上の距離で観測されました。

この試験の結果、地表からの反射により衝撃波は広域にわたって影響し、数百キロメートル先でも被害が確認されました。また、その放射能の影響もわずかでした。これは、出力の制限が功を奏したためとされています。

海外からの反響

この爆発が報じられると、アメリカや他の国々からは強い非難の声が上がりました。ツァーリ・ボンバの実験は、冷戦の緊張を更に高める結果となりました。

結論

ツァーリ・ボンバは試験以降、同等以上の威力を持つ兵器が開発されることはありませんでした。その影響力と威力は、現代の戦略や兵器設計においても記憶に残ります。

ツァーリ・ボンバは象徴的な存在となり、今後の兵器製造において無差別的な攻撃が持つリスクも示唆しています。

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