RDS-37

RDS-37：ソ連初の多段階水爆実験

RDS-37は、1955年11月22日にソビエト連邦で実施された、初の多段階水爆実験です。この実験は、ソ連の核兵器開発において重要なマイルストーンとなりました。それまでの核兵器とは異なり、RDS-37は核分裂反応をトリガーとして核融合反応を起こす、真の水素爆弾でした。

実験の概要

当初、RDS-37の核出力は3メガトンと設計されていましたが、実際の実験では1.6メガトンに減じられました。この出力調整は、実験の安全性を確保するための措置でした。RDS-37は、いわゆる「サハロフの第三のアイデア」（アメリカではテラー・ウラム型と呼ばれる方式）に基づいた設計で、多段階構造を持つ点が特徴です。

構造と原理

RDS-37の内部には、核融合燃料として固体化された水素化リチウムが用いられていました。しかし、核出力を抑えるために、一部が鉛などの不活性材料に置き換えられました。この変更は、核爆発時の衝撃波を増幅させるという予期せぬ結果をもたらし、地上施設を破壊し、3人の死者を出す事故を引き起こしました。

実験とその影響

RDS-37は、セミパラチンスク核実験場の上空から投下され、ソ連初の空中投下型2段階水爆となりました。この実験に先立つ1953年8月12日には、ソ連初の水爆と称されたRDS-6核実験が行われていましたが、これは実際には核分裂力を強化した原子爆弾に過ぎなかったと言われています。RDS-37の実験成功は、ソ連の核兵器開発技術が、より高度な段階に進んだことを示しました。

関連事項

RDS-1: ソ連初の核実験。
アイビー作戦: アメリカ初の水爆実験。
キャッスル作戦: アメリカ初の乾式水爆実験。
RDS-220: ソ連が実施した史上最大の水爆実験。

参考文献

David Holloway, Stalin and the Bomb: The Soviet Union and Atomic Energy 1939-1956 (Yale University Press, 1995), ISBN 0-300-06664-3
デヴィッド・ホロウェイ（川上洸・松本幸重訳）『スターリンと原爆（上・下）』（大月書店, 1997年）
Alexei Kojevnikov, Stalin's Great Science: The Times and Adventures of Soviet Physicists (Imperial College Press, 2004), ISBN 1-86094-420-5
Richard Rhodes, Dark Sun: The Making of the Hydrogen Bomb (Simon and Schuster, 1995), ISBN 0-684-80400-X
リチャード・ローズ（小沢千重子・神沼二真訳）『原爆から水爆へ――東西冷戦の知られざる内幕（上・下）』（紀伊國屋書店, 2001年）

外部リンク

RDS-37核実験のビデオ（YouTube）https://www.youtube.com/watch?v=-wr2WZABeeQ
Soviet and Nuclear Weapons History
Russia's Nuclear Weapons Program at the Atomic Forum

実験映像

実験の様子を捉えた映像は、当時の核兵器開発の緊迫した状況を伝えています。これらの映像は、核兵器の恐ろしさと、平和への願いを改めて感じさせます。

RDS-37は、その後の核兵器開発に大きな影響を与え、冷戦時代の核戦略を形成する上で重要な役割を果たしました。この実験は、技術的な進歩と同時に、核兵器の潜在的な危険性を深く認識させる出来事でした。

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