ツェワンラブタン

ツェワン・ラブタン：ジュンガルを率いた英雄の生涯

ツェワン・ラブタン（策妄阿喇布坦、Tsewang Rabtan, 1665年 - 1727年）は、オイラートのジュンガル部のホンタイジとして、17世紀後半から18世紀初頭にかけて中央アジアの歴史に大きな足跡を残しました。叔父ガルダン・ハーンの死後、ジュンガル部を率い、清朝との対立、チベットへの侵攻など、激動の時代を生きました。

出生と出自

ツェワン・ラブタンの出生年については、1665年説と1643年説の二つが存在します。しかし、叔父ガルダンの出生年や、当時の年齢に関する記録などを考慮すると、1665年説が有力とされています。彼はジュンガル部の有力者センゲの長男として生まれました。

権力掌握への道

幼少期に父センゲが暗殺されるという不幸に見舞われます。その後、叔父ガルダンが仇を討ち、ジュンガル部の実権を掌握しました。初期の頃はガルダンと行動を共にしていましたが、次第に対立を深めていきます。ガルダンが自身の婚約者を横取りしたことや、弟ソノムが殺害されたことなどが、決別のきっかけとなりました。

1689年、ツェワン・ラブタンはガルダンから逃れ、自身の勢力を築き始めます。反ガルダン派の部衆を率いて各地を転々としながら、清朝との連携を模索しました。ガルダンとの戦いでは、清朝の支援を受けながら勢力を拡大し、最終的にジュンガル部の長としての地位を確立しました。

チベット侵攻

ツェワン・ラブタンは、チベットに対する関与を深めていきます。1717年には、軍を派遣してラサを占領し、チベットを支配していたグシ・ハン朝のラサン・ハンを殺害しました。しかし、この侵攻はチベットの人々の反発を招き、清朝が介入する口実を与えることになります。清朝は軍を派遣し、1720年にはラサを奪還しました。

突然の死

1727年、ツェワン・ラブタンは急死しました。毒殺されたとも言われていますが、真相は明らかではありません。彼の死後、息子のガルダンツェリンがジュンガル部の長となり、清朝との戦いを継続しました。

歴史的意義

ツェワン・ラブタンは、ジュンガル部を率いて中央アジアに一大勢力を築き上げました。清朝との対立、チベットへの侵攻など、その行動は当時の国際関係に大きな影響を与えました。彼の生涯は、中央アジアの歴史における重要な転換期を象徴するものと言えるでしょう。

親族

曾祖父: カラクラ（ジュンガル部始祖）
祖父: バートル・ホンタイジ（ジュンガル部2代目）
父: センゲ（ジュンガル部3代目）
叔父: ガルダン（ジュンガル部4代目）
兄弟: ソノム・アラブタン、ダンジン・オムブ
妻: アカイ、ギュング・アラブタン、セテルジャブ
子供: ガルダンツェリン、ロブザン・ショノ、ボトロク

参考文献

宮脇淳子『最後の遊牧民族 ジューンガル部の興亡』講談社〈講談社選書メチエ〉、1995年
若松 寛「ツェワン･アラブタンの登場」『史林』1965

関連項目

清・ジュンガル戦争

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