ツォウ族

ツォウ族：台湾南部の誇り高き民族

台湾原住民の一種族であるツォウ族は、主に台湾南部の南投県、嘉義県、高雄県に居住しています。1998年の統計では、7,116人のツォウ族の人々がこの地域に暮らしていました。ツォウ族は、その歴史と文化において独特のアイデンティティを保ち続けており、台湾社会において重要な役割を果たしています。

ツォウ族の分布と歴史

ツォウ族は、大きく南ツォウ群と北ツォウ群に分けられます。南ツォウ群にはカナカナブ群とサアロア群があり、北ツォウ群には阿里山ツォウ群が存在します。かつてはトフヤ、タッパン、イムツ、ロフトの4つの集落がありましたが、20世紀初頭の伝染病流行により、イムツとロフトの集落は消滅してしまいました。現在、阿里山ツォウ群には8つの集落があり、それぞれが歴史的なつながりを持ちながら独自の文化を育んでいます。

かつて日本人研究者によってツォウ族の一支族と分類されていたカナカナブ族とサアロア族は、文化、言語、歴史的経緯などの違いを理由に、当事者たちの運動の結果、2014年にそれぞれ独立した民族として認められました。この出来事は、ツォウ族の歴史において重要な転換点となりました。

独特の社会組織と伝統

ツォウ族社会は、男子会所であるクバを中心とした厳格な父系社会です。村落全体の問題は、各氏族の長老による合議制によって解決され、頭目が実務を担当する社会構造となっています。頭目は世襲制であり、戦争や狩猟時には征帥が指揮官として活躍しました。特に戦場で功績を残した族人は勇士として称えられました。

ツォウ族の伝統的な祭祀は、マヤスビ祭、播種祭、小米収穫祭、戦祭などがあり、それらで行われる伝統的な合唱は、その荘厳さから、昭和10年代に台湾原住民の伝統音楽を調査した黒澤隆朝氏によって「黒人霊歌にも匹敵する」と絶賛されました。現在でも「エホイ」「ホメヤヤ」「ミヨメ」などの伝統合唱はCDとして販売されており、その音楽は日本でも広く知られるようになりました。日本の作曲家、清水脩氏もツォウ族の伝統音楽を基にした混声合唱曲「台湾ツウオ族の歌」を作曲しています。

始祖伝説と日本人との関係

ツォウ族の始祖伝説によれば、人類の祖先であるニヴヌという女神が玉山の山頂に降り立ち、大洪水の後、生き残った人々は台湾各地に移り住んだとされています。兄弟が弓を分け合って別れたという物語は、ツォウ族の分散を示唆しています。

興味深いことに、日本統治時代、ツォウ族は「北東」から来た日本人を、伝説の兄弟の兄である「マーヤ」の帰還と捉えました。そのため、ツォウ族は比較的早期に日本に帰順し、良好な関係を築きました。多くの台湾原住民が日本人を「リポン」と呼ぶのに対し、ツォウ族は現在でも日本人を「マーヤ」と呼んでいる点が、この特別な関係性を示しています。黒澤隆朝氏は、フィールド調査中にこの伝説をモチーフにした歌を採録しています。

まとめ

ツォウ族は、独自の文化、社会構造、そして歴史を誇る台湾原住民の一族です。玉山を起源とし、独特の音楽や祭祀、そして日本人との特異な関係性など、彼らの文化は多様な魅力に満ち溢れています。 彼らの伝統と文化は、台湾の歴史とアイデンティティを理解する上で重要な要素であり、今後もその保護と継承が求められています。

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