サアロア族

サアロア族：台湾の豊かな文化と歴史を彩る原住民族

サアロア族（Saaroa、ラアロア族とも呼ばれる）は、台湾に暮らす原住民族の一つです。高雄市桃源区と那瑪夏区に4つの集落を形成し、独自の言語であるサアロア語、独自の文化、そして伝統を大切に受け継いでいます。かつてはツォウ族の一部と見なされていましたが、2014年に独立した民族として台湾政府に認められました。

集落の歴史と周辺民族との関係

かつてサアロア族は、排剪社、美壠社、塔蠟社、雁爾社の4つの集落に分かれていました。これらの集落は、近隣のタイボアン族（大武壠族）の集落とともに、「四社生番」と呼ばれていました。また、山麓に居住するルカイ族の集落とは、「頂四社」や「上四社」といった呼称で区別されていました。塔蠟社は交通の不便さから排剪社と合併しました。

日本統治時代には、ブヌン族（布農族）の集団移住政策によって、サアロア族はブヌン族との交流が深まりました。その結果、ブヌン語が広く使用されるようになり、サアロア族の文化と言語は一時、危機に瀕しました。

現在、サアロア族の集落は、高雄市桃源区の草水部落、高中部落、美蘭部落、四社部落、そして那瑪夏区の瑪雅部落に点在しています。

サアロア族の伝統行事

聖貝祭（Miatungusu）

聖貝祭は、サアロア族にとって最も重要な宗教儀式です。第2次世界大戦後には一度途絶えましたが、1993年に復活しました。元々は2～3年に一度、収穫後に開催されていましたが、現在は毎年2月下旬から3月上旬に開催されています。祭りの期間は、かつては6日間にも及びましたが、現在は1日間に短縮されています。

この祭りは、祖先から受け継いだ「聖なる貝」を祀るものです。伝説によれば、サアロア族の祖先は、小人族とともに暮らしていましたが、人口増加に伴い、小人族に迷惑をかけないよう東方の地を離れました。別れを惜しんだ小人族は、サアロア族に聖なる貝を授けました。

聖貝祭では、聖なる貝を酒に浸して洗い、その色の変化を観察する儀式や、聖なる貝を奪い合う儀式などが行われます。現在では、簡略化された形で行われていますが、サアロア族の伝統と精神を繋ぐ重要な儀式として、大切に受け継がれています。

魚獲祭（Tumatuhlucu）

魚獲祭は、アワの生育期間に行われる伝統的な漁撈儀式です。長老の指導の下、氏族の男性たちが川で魚を捕獲します。毒性のある植物を用いて魚を麻痺させ、それを捕獲した後、解毒剤を川に流すことで、生態系への配慮も示しています。

アワ収穫祭（Mariavʉcʉngʉ）

アワはサアロア族の主要な作物です。晩夏から初秋にかけて行われるアワ収穫祭では、長老が神に感謝し、祈りを捧げた後、氏族のメンバーが協力して収穫作業を行います。

サアロア族の伝説と民話

サアロア族には、北斗七星の由来や、太陽を射落とした英雄の話、表門と裏門の守護神の話など、多くの興味深い伝説や民話が残されています。これらの物語は、サアロア族の自然観や信仰、社会構造などを反映しており、彼らの歴史と文化を深く理解する上で貴重な資料となっています。

例えば、太陽を射落とした英雄の話は、サアロア族の頭目の起源を説明する物語です。また、表門と裏門の守護神の話は、サアロア族の土地に対する信仰と、自然との共存を表しています。

サアロア族の信仰と魔除け

サアロア族は、善霊と悪霊の信仰を持っています。アカザ、デイゴ、セッコク、オオタニワタリなどの植物は、魔除けとして用いられています。また、男性は外出時に刀を携行し、集会所にも魔除けの植物が飾られます。これらの風習は、彼らの生活圏における自然と精霊に対する畏敬の念を示すものです。

サアロア族の苗字

1950年の調査では、サアロア族には24種類の苗字があったとされていますが、現在では18種類に減少しています。これらの苗字は、台湾華語の苗字と対応しており、サアロア族の社会構造や歴史を反映しています。

サアロア族の文化は、彼らの歴史と自然環境の中で育まれた独特のものです。彼らの伝統行事、伝説、そして信仰は、台湾の豊かな文化と歴史の一端を垣間見せてくれます。現在もなお、独自の文化と伝統を守りながら、現代社会に適応していくサアロア族の歩みは、注目に値します。

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