ツクシガモ属

ツクシガモ属

概要

ツクシガモ属（学名：Tadorna）は、鳥綱カモ目カモ科に分類される鳥類の一群です。主にユーラシア大陸、アフリカ、オーストラリアなどに分布しており、その独特な形態と生態から、カモ科の中でも特徴的な存在として知られています。

形態

ツクシガモ属の鳥類は、いくつかの共通した形態的特徴を持っています。翼の次列風切羽には、光の当たり方によって緑色に輝く美しい翼鏡が現れます。また、雨覆羽は白く、翼を畳んでいる状態でも目を引くアクセントとなります。さらに、三列風切羽は鮮やかな赤褐色を呈しているのが一般的です。後肢は他のカモ類と比較してやや長い傾向にあり、これにより地上での活動にも適しています。性的二型の度合いは種によって異なり、雌雄の羽色が非常によく似ている種もいれば、明確な違いが見られる種も存在します。

分類

本属は、IOC World Bird List (v11.1) によると、以下の6種で構成されています。

ネズミガシラアカツクシガモ (Tadorna cana)
カンムリツクシガモ (Tadorna cristata)
アカツクシガモ (Tadorna ferruginea)
ツクシガモ (Tadorna tadorna)
クビワアカツクシガモ (Tadorna tadornoides)
クロアカツクシガモ (Tadorna variegata)

分類学的には変遷があり、かつてはシロガシラツクシガモ (Tadorna leucops) も本属に含まれていました。しかし、近年の分子系統解析による研究結果では、シロガシラツクシガモよりもエジプトガン (Alopochen aegyptiaca) の方が、ツクシガモ属の他の構成種と遺伝的に近縁であることが示されています。この解析結果は、シロガシラツクシガモを含めた従来のツクシガモ属が、エジプトガンを除くと側系統群となることを示唆しており、現在の分類ではシロガシラツクシガモは別属 (Radjah) に移されています。エジプトガンを本属に含めるべきかについては議論があるものの、少なくとも従来のツクシガモ属の枠組みは分子的な知見により見直されています。

生態

ツクシガモ属の鳥類は、独特な繁殖生態を持っています。多くのカモ類が水辺の茂みなどに巣を作るのに対し、本属の鳥は地面に自然にできた穴や、ウサギなどの哺乳類が掘った巣穴、あるいは樹木の洞（樹洞）などを利用して営巣します。これらの隠れた場所に巣を作ることで、捕食者から卵や雛を守る効果があると考えられます。繁殖期にはこれらの安全な巣穴で卵を温め、雛を育てます。この営巣場所の選択は、水辺環境だけでなく、草原や半砂漠地帯など、多様な環境に適応する彼らの柔軟性を示しています。

まとめ

ツクシガモ属は、美しい翼鏡や独特の営巣習性を持つ魅力的な鳥類グループです。分類学的な位置づけには近年の分子研究により変化が見られますが、その生態や形態はカモ科の中でも特筆すべきものです。日本でも、冬鳥として代表的な種であるツクシガモ (Tadorna tadorna) を観察することができます。

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