ツシマテン

ツシマテン（対馬貂）

概要

ツシマテン（学名: Martes melampus tsuensis）は、食肉目イタチ科テン属に分類される哺乳類で、テンの亜種です。日本国内では対馬にのみ生息しており、その希少性から日本国指定の天然記念物となっています。対馬の自然を象徴する動物の一つとして、保護の対象となっています。

形態

ツシマテンは、頭胴長が約45cm、尾長が約19cm、体重が1.1～1.5kg程度の中型の哺乳類です。体毛は季節によって大きく変化するのが特徴です。夏毛は、背中と体の側面が黒褐色、腹部が黄褐色になります。一方、冬毛になると、口元と鼻の黒い部分を除き、頭部が灰白色に、体の他の部分は黄褐色へと変化します。これにより、周囲の環境に溶け込みやすくなり、外敵から身を守るのに役立っていると考えられます。

生態

ツシマテンは対馬全域に生息しており、森林を主な生活場所としています。しかし、集落の周辺にも姿を現し、飼育されているニワトリを捕食することもあります。食性は非常に多様で、ネズミや鳥類、両生類、爬虫類などの小型脊椎動物、昆虫類、ムカデなどの土壌生物、ヤマグワやマタタビなどの果実など、様々なものを食べます。単独で生活し、平均70ha程度の排他的な行動圏を持っています。繁殖期は夏で、交尾後、受精卵の着床遅延を経て、翌年の春に出産します。一度の出産で2～4頭の子どもを、樹洞などを利用して育てます。

保全状況

ツシマテンは、環境省レッドリストで準絶滅危惧（NT）に指定されており、長崎県版レッドデータブックでも同様の評価を受けています。1971年には国の天然記念物にも指定されましたが、近年、生息地の減少や交通事故による死亡の増加が懸念されています。特に、集落周辺での生活もするため、交通事故に遭うリスクが高まっています。今後、保護対策がより一層重要になると考えられます。

関連情報

哺乳類レッドリスト (環境省)
日本の哺乳類一覧

参考文献

花井正光 『日本の天然記念物』 講談社、1995年
米田政明、阿部 永 監修 『改訂2版　日本の哺乳類』 東海大学出版会、2008年

外部リンク

* Martes melampus tsuensis（環境省絶滅危惧種情報 by 生物多様性情報システム J-IBIS）

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