ツミ

ツミ (雀鷹)

ツミ（学名: Accipiter gularis）は、タカ目タカ科ハイタカ属に分類される小型の猛禽類です。日本では、その姿がスズメに似ていることから「雀鷹」とも呼ばれます。

分布

ツミは、東アジアを中心に広い範囲に分布しています。具体的には、インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、韓国、中国、台湾、北朝鮮、日本、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、マーシャル諸島、マレーシア、ラオスなどで確認されています。

繁殖期には、中国東部、日本、朝鮮半島などで繁殖し、冬季になると、中国南部や東南アジアへと南下して越冬します。日本では、温暖な地域では一年を通して生息する留鳥ですが、寒冷地では冬季に南下する夏鳥として知られています。

亜種として、八重山列島に固有のリュウキュウツミ（A. g. iwasakii）が存在します。

形態

ツミは、オスとメスで大きさが異なり、オスは全長約27cm、メスは約30cmです。翼を広げた際の長さは50-63cm、体重は75-160g程度です。

和名の「雀」は、小型であることを意味し、スズメタカが変化したメスに対する呼称に由来します。ハイタカに似ていますが、ツミの方が小型で、眉班もハイタカほど目立ちません。

成鳥のオスは、上面が青みがかった灰色で、胸から体側面にかけてオレンジ色の羽毛で覆われています。虹彩は赤褐色です。メスの成鳥は、上面が灰褐色で、下面には暗褐色の横縞模様があります。虹彩は黄色です。

幼鳥は、上面が暗褐色、下面が淡褐色の羽毛で覆われ、胸部には縦縞、腹部にはハート状、体側面には横縞状の暗褐色の斑紋が入ります。虹彩は緑褐色です。眼の周囲は黄色いリング状になっています。

分類

ツミは、以下の亜種に分類されます。

Accipiter gularis gularis (Temminck & Schlegel, 1844) - ツミ
Accipiter gularis iwasakii - リュウキュウツミ

生態

ツミは、平地から山地の森林に生息し、単独またはペアで生活します。食性は動物食で、主に小型の鳥類を捕食しますが、爬虫類、小型哺乳類、昆虫なども食べます。和名の「雀」は、スズメを含む小型鳥類を捕食することに由来し、英名（sparrow=スズメ）とも関連があります。

繁殖形態は卵生です。繁殖期には縄張りを形成し、針葉樹の上に小枝を組み合わせた巣を作ります。4月から6月にかけて一度に2-5個の卵を産み、抱卵期間は約30日です。雛は孵化後約30日で巣立ちます。

ツミは、巣の近くに侵入するカラスなどの捕食者に対し防衛行動を行います。かつては、オナガがツミの防衛行動を頼り、ツミの巣の近くで繁殖することが多く見られました。しかし近年ではカラスの個体数が増加し、ツミがカラスを防ぎきれなくなったことから、オナガがツミを頼りにする行動が減少傾向にあります。

人間との関係

鷹狩りにおいては、古くからオスのツミを「エッサイ（悦哉）」と呼ぶことがあります。

都市部では、緑化の進行に伴いツミの繁殖例が増加していますが、一方で開発による生息地の破壊によって生息数は減少傾向にあります。

リュウキュウツミは、環境省レッドリストにおいて絶滅危惧II類（VU）に指定されています。

参考文献

安部直哉 『山渓名前図鑑 野鳥の名前』、山と渓谷社、2008年、236-237頁。
五百沢日丸 『日本の鳥550 山野の鳥 増補改訂版』、文一総合出版、2004年、28-29頁。
黒田長久監修 C.M.ペリンズ、A.L.A.ミドルトン編 『動物大百科7 鳥I』、平凡社、1986年、182頁。
高野伸二編 『山渓カラー名鑑 日本の野鳥 特装版』、山と渓谷社、1985年、146-147頁。
高野伸二 『フィールドガイド 日本の野鳥 増補改訂版』、日本野鳥の会、2007年、178-179頁。
中村登流監修 『原色ワイド図鑑4 鳥』、学習研究社、1984年、107頁。
真木広造、大西敏一 『日本の野鳥590』、平凡社、2000年、150頁。
『小学館の図鑑NEO 鳥』、小学館、2002年、39頁。

関連項目

ハイタカ属
ハイタカ
日本の野鳥一覧
鳥類レッドリスト (環境省)

外部リンク

CITES homepage
Appendices I, II and III
IUCN Red List - Home Page
BirdLife International 2008. Accipiter gularis. In: IUCN 2009. 2009 IUCN Red List of Threatened Species.
環境省 自然環境局 生物多様性センター
絶滅危惧種情報（動物）- リュウキュウツミ -

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