ツルヨシ

ツルヨシ（蔓葦）

ツルヨシ（学名: Phragmites japonica）は、イネ科ヨシ属の多年草です。ヨシに非常によく似ていますが、いくつかの点で異なっています。特に、地上を長く這う匍匐茎を持つことが大きな特徴です。

特徴

形態: 草丈は1.5～2m程度で、ヨシよりもやや小型です。茎は直立し、多数の節があります。葉は長さ10～30cm、幅2～3cmの長楕円形で、葉先は尖っています。葉質は硬く、縁はざらつきます。葉の色は白っぽい緑色で、つやはありません。葉鞘は白く粉を吹き、全体に紫を帯び、特に先端近くが赤く染まることが多いです。
匍匐茎: 地表を這うように伸びる匍匐茎が最大の特徴です。長さは3～5mにも達し、節ごとに小さな葉をつけます。節からは根を下ろし、新たな株を形成します。
花: 8月以降に開花します。茎の先端から長さ30cmほどの花序を出し、ヨシに似ていますが、やや小さいです。小穂は長さ8～12mmで、褐色を帯びています。果実が熟すと綿毛が見えるようになります。
小穂: 複数の小花を含み、一番下の小花は雄性、その他は両性です。小花の基部には綿毛が多数伸びています。ツルヨシの場合、包穎が最下の小花の護穎の半分かそれをやや超える点で、半分に達しないヨシと区別されます。

生育環境

河川の水際の日当たりの良い場所に生育します。泥地よりも砂地の河原を好みます。ヨシよりも上流に分布し、渓流域にも出現します。ネコヤナギなどと一緒に生えていることが多いです。水際から浅い水中にかけて大きな群落を形成し、優占種となることもあります。また、周辺の止水や湿地にも生育することがあります。

匍匐茎は陸上にも水中にも伸び、群落を広げる役割を果たします。節から根を下ろし、タケノコのような芽を出し、複数の茎を伸ばして株を定着させます。さらに、地下茎を伸ばして根を張ることで、株を安定させます。

分布

本州、九州、沖縄島に分布します。国外では、国後島、朝鮮半島、中国、台湾、シベリア極東域に分布しています。

ヨシとの違い

ツルヨシはヨシと非常によく似ていますが、以下の点で区別できます。

匍匐茎: ツルヨシは地表を這う匍匐茎を持つ一方、ヨシの匍匐茎は地中を伸びます。
毛: ツルヨシの匍匐茎と茎の節には白い毛が密生しますが、ヨシにはありません。
葉鞘: ツルヨシの葉鞘の上部は赤く染まりますが、ヨシは全体に薄い緑色です。
小穂: ツルヨシの小穂の第一包穎は第一小花の長さの半分を超えますが、ヨシでは半分以下です。

利害

ツルヨシの茎はヨシと同じように利用されますが、草丈が低いため、用途は限られます。河川においては、川原を安定させる植物として重要です。多自然型の堤防やビオトープ施設の構成にも利用されます。生育環境の幅が広く、成長も早いため、これらの目的に適しています。また、水質浄化の働きも期待されています。

一方で、規模の小さいビオトープ施設では、繁殖力が強すぎるため、管理が難しい場合があります。素早く広がり、根を深く張るため、刈り取っても退治できず、あっという間に群落に覆われてしまうことがあります。

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