ツール・ド・フランス1979

ツール・ド・フランス1979：イノー連覇とズートメルクのドーピング

1979年のツール・ド・フランスは、第66回目の開催となる全24ステージの大会でした。ベルナール・イノーが連覇を狙う一方で、ヨープ・ズートメルク、ジョアキン・アゴスティーニョ、ハニー・クイパーといったベテラン勢が、イノーにどう立ち向かうのかが大きな見どころでした。また、前回大会で多くのリタイア者を出したラルプ・デュエズが、今大会では2回もゴール地点に設定されたことも注目を集めました。

大会序盤：イノーの圧倒的な力

大会は早くも第1ステージからピレネーステージという厳しい設定でした。第2ステージの個人タイムトライアルでは、イノーがズートメルクやアゴスティーニョを抑えてマイヨ・ジョーヌを獲得。続く第3ステージも制し、序盤からその強さを見せつけました。第8ステージのチームタイムトライアルを終えた時点で、イノーはズートメルクに1分18秒の差をつけ、連覇に向けて順調な滑り出しを見せました。

波乱のルーベ：ズートメルクの逆襲

しかし、第9ステージは「北の地獄」と称されるパリ〜ルーベでおなじみのルーベがゴール地点。このステージでズートメルクはスプリンターの力を借りてイノーを打ち破り、イノーに3分45秒もの差をつけました。総合でもイノーを逆転し、2分5秒差でマイヨ・ジョーヌを奪取しました。この劇的な逆転劇は、大会の流れを大きく変える出来事となりました。

アルプスステージ：イノーとズートメルクの一騎打ち

第11ステージの個人タイムトライアルはイノーが制しましたが、ズートメルクも36秒差に抑え、マイヨ・ジョーヌを維持したままアルプスステージへと向かいました。第14ステージを終えて、ズートメルクとイノーの差は49秒。3位のクイパーには7分以上の差がついており、イノーとズートメルクによるマッチレースの様相を呈していました。第15ステージの山岳タイムトライアルでは、イノーがズートメルクに2分37秒差をつけて勝利し、再びマイヨ・ジョーヌを奪還しました。

ラルプ・デュエズ：決着の時

続く第16ステージでもイノーがズートメルクに1分以上の差をつけ、第17・18ステージはラルプ・デュエズという最大の難関が待ち構えていました。第17ステージはアゴスティーニョが制しましたが、イノーはズートメルクをマークして同タイムでゴール。第18ステージはズートメルクが勝利したものの、イノーは47秒差でゴールし、総合首位の座を守り抜きました。ラルプ・デュエズの2ステージを終えて、イノーはズートメルクに1分58秒の差をつけていました。

イノーの連覇確定とズートメルクのドーピング

ラルプ・デュエズでの戦いを終え、イノーは自信を深めたのか、第21ステージの個人タイムトライアルでズートメルクに1分9秒差をつけて区間優勝。総合でも3分7秒差をつけ、残る3ステージが平坦区間であったことから、イノーの連覇はほぼ確実となりました。総合優勝を確実にしたイノーは、最終ステージまで気を緩めることなく、見事な勝利を飾りました。しかし、ズートメルクはドーピング検査で陽性反応が出たため、10分間のペナルティが課せられ、最終的な総合タイムはイノーに13分7秒差をつけられる結果となりました。

ツール・ド・フランス1979は、イノーの圧倒的な強さと、ズートメルクのドーピングという後味の悪い結末が残る大会となりました。

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