ツール・ド・フランス1984

ツール・ド・フランス1984：世代交代のドラマ

1984年のツール・ド・フランスは、第71回目の大会として、6月29日から7月22日まで全23ステージで開催されました。前年の覇者ローラン・フィニョンと、5度目の優勝を目指すベルナール・イノーの対決に注目が集まりましたが、予想外の展開が繰り広げられました。

大会前の注目点

前年、ベルナール・イノーの代役としてルノーのエースに抜擢され、見事優勝を果たしたローラン・フィニョンは、名実ともにエースとして連覇に挑みました。一方、ルノーを離れたベルナール・イノーは、ラ・ヴィ・クレールを新たに結成し、5度目の総合優勝を目指しました。また、フィニョンのチームメイトで、1983年の世界自転車選手権を制したグレッグ・レモンがツールに初参加し、元チームメイト同士であるフィニョンとイノーの対決に注目が集まりました。

大会の展開

大会は、第5ステージでヴァンサン・バルトーが15分以上の大差をつける逃げ切りに成功し、第14ステージまでマイヨ・ジョーヌをキープする展開となりました。この時点で、フィニョンは10分13秒差の3位、イノーは12分26秒差の5位につけていました。しかし、第14ステージから7区間連続で山岳ステージが続くため、本当の勝負はこれからだと考えられていました。

第16ステージの個人タイムトライアルでフィニョンは区間優勝を果たし、バルトーとの差を6分29秒に縮めました。続く第17ステージは、ツール・ド・フランスの名物であるラルプ・デュエズがゴール地点。フィニョンは快走を見せ、区間優勝こそルイス・エレラに譲ったものの、2位でゴールし、ついにマイヨ・ジョーヌを奪取しました。一方、イノーは総合2位に浮上したものの、フィニョンに2分55秒差をつけられ、総合タイム差は4分22秒まで広がりました。

さらにフィニョンは続く第18ステージでも圧倒的な強さを見せ、区間優勝。イノーはさらに2分58秒の差をつけられ、総合タイム差は8分39秒まで広がり、勝負の趨勢はほぼ決しました。フィニョンは第22ステージの個人タイムトライアルでも区間優勝を果たし、終わってみればイノーに10分32秒差をつける完勝。前年の優勝がフロックではないことを証明しました。グレッグ・レモンは総合3位に入り、新人賞を獲得しました。

ギマール一派の代理戦争

フィニョン、イノー、レモンはいずれもシリル・ギマールの下で戦った同志でしたが、イノーがレモンらを引き連れてラ・ヴィ・クレールを結成し、ギマールと袂を分かったことから、大会は「ギマール一派」の「代理戦争」の様相を呈し、戦前から話題を集めていました。

総合成績

ローラン・フィニョンが総合優勝、ベルナール・イノーが2位、グレッグ・レモンが3位という結果になりました。フィニョンは、この勝利で世代交代を印象付け、その後の自転車界を牽引する存在となりました。

マイヨ・ジョーヌ保持者

大会期間中、マイヨ・ジョーヌはヴァンサン・バルトー、ローラン・フィニョンが着用しました。

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