ツール・ド・フランス1993

1993年ツール・ド・フランス：インドゥラインの3連覇と数々のドラマ

1993年のツール・ド・フランスは、第80回大会として、1993年7月3日から7月26日にかけて開催されました。プロローグを含む全20ステージで競われ、フランスのテーマパーク、ピュイ・デュ・フーからスタート。パリ近郊を通り東へと向かうコース設定となりました。

見どころ：過酷な山岳ステージと激戦

今大会の大きな特徴は、その過酷な山岳ステージです。従来ツール・ド・フランスの最高峰として知られたラルプ・デュエズがコースから外れた代わりに、イゾラ2000を含む、標高2645mのガリビエ峠、そしてそれをも超える2802mのボネット峠がコースに組み込まれました。これにより、近年のツール・ド・フランスの中でも特に過酷な山岳レースとなりました。

アルプスステージでは、ガリビエ峠とボネット峠での激戦が繰り広げられました。特にボネット峠では、かつての山岳王ロベルト・ミラーが素晴らしい逃げを見せましたが、ミゲル・インドゥライン率いる先頭集団に捕らえられました。このステージでは、膝痛に苦しんでいたローラン・フィニョンがリタイアするという出来事もありました。

続くピレネー山脈ステージでも、オリベリオ・リンコンの鮮やかな逃げや、ヤンスクワの最後の追い上げなど、ドラマチックな展開が続きました。最終盤には、インドゥラインとトニー・ロミンゲルによる一騎打ちが期待されましたが、ヤンスクワが最後の最後でロミンゲルをかわして勝利しました。

インドゥラインの3連覇とダブルツール連覇

ジロ・デ・イタリアで連覇を果たしたミゲル・インドゥラインは、今大会でも圧倒的な強さを見せつけました。プロローグからの圧勝劇を皮切りに、個人タイムトライアルでは盤石の強さでマイヨ・ジョーヌを獲得。山岳ステージでも、ライバルたちの攻撃を巧みにかわし、着実にリードを広げていきました。最終的に、インドゥラインは3連覇を達成。さらに、ジロ・デ・イタリアとの2年連続ダブルツール制覇という史上初の快挙を達成しました。この偉業は、現在でもインドゥラインしか成し遂げていない偉業です。

その他の注目ポイント

今大会は、ランス・アームストロングのツール・ド・フランス初出場でも注目されました。アームストロングは区間優勝を果たすも、チーム監督の指示により途中で棄権。後に7度のツール・ド・フランス優勝（ドーピング問題により成績取り消し）を果たすことになる彼にとって、重要な経験となった大会だったと言えるでしょう。

また、今大会は地元フランス勢の低迷が深刻化しました。表彰台どころか、ベスト10入りすら果たせず、山岳スペシャリストであるジャンフィリップ・ドジュワの15位が最高位という結果に終わっています。一方、新人賞を獲得したアントニオ・マルティンは、シーズン終了後に悲劇に見舞われます。インドゥラインのアシストとして期待されていた彼は、トレーニング中に交通事故で亡くなりました。

レース概要

序盤は、マリオ・チポリーニとウィルフレッド・ネリッセンによるマイヨ・ジョーヌ争いが白熱。チームタイムトライアルでは、オンセがメカトラブルに見舞われ、GB-MGが勝利しました。その後、ヨハン・ムセウがマイヨ・ジョーヌを獲得するなど、序盤は激しい順位変動が見られました。しかし、インドゥラインは個人タイムトライアルでマイヨ・ジョーヌを奪取すると、その後は盤石のレース運びで3連覇へと突き進んでいきました。

1993年のツール・ド・フランスは、インドゥラインの圧倒的な強さ、過酷な山岳ステージ、そしてアームストロングの初出場など、様々な要素が絡み合い、記憶に残る大会となりました。その激闘は、今もなお多くの自転車ファンを魅了し続けています。

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