テアトルサンク

福井県福井市中央に所在するテアトルサンクは、有限会社伊井興業が運営する映画館です。その歴史は古く、前身の一つである松竹座が1930年（昭和5年）11月に開館したことに遡ります。

松竹座の誕生と戦前の福井

昭和初期の福井市には、既に福井劇場や中央館、松竹館といった複数の映画館が存在し、激しい顧客獲得競争を繰り広げていました。そのような状況下で、地元の実業家であった伊井與三吉氏が多額の資金を投じ、大阪松竹座を模した壮麗な建物を持つ松竹座が誕生しました。これにより、福井の映画興行は一層の競争時代に突入します。松竹座は特に知的な層の観客を集め、その存在感を示しました。1940年代に入ると、百貨店「だるま屋」を中心としたエリアに佐佳枝劇場も開館し、この一帯は映画館が集積する賑やかな地域となっていきました。

度重なる被災と驚異の復興

しかし、戦時下には度重なる災難に見舞われます。1943年（昭和18年）3月には佐佳枝劇場を火元とする火災が発生し、周辺が被災しましたが、鉄骨煉瓦造りの松竹座は内部こそ焼失したものの、建物全体は延焼を免れました。そして、1945年（昭和20年）7月の福井空襲では、市内の他の映画館が全て壊滅的な被害を受ける中で、松竹座は建物の外郭部分を残し、年末には早くも上映を再開するという驚異的な回復力を見せました。さらに、1948年（昭和23年）6月に発生した福井地震では、多くの建物が全壊あるいは全焼する中、松竹座は半焼にとどまり、わずか2ヶ月後には再び観客を迎えるまでに復旧しました。こうした幾多の困難を乗り越え、1950年（昭和25年）時点でも、松竹座は福井市内に残る5館の映画館の一つとして名を連ねていました。

戦後の拡大と集約、そしてテアトルサンクへ

戦後、経営母体である伊井興業は事業を拡大し、一時期は松竹座を含む5つの映画館を運営するまでになりました。しかし、時代の変遷と共に映画館の再編が進みます。1970年（昭和45年）に日活劇場が閉館し駐車場に転用された後、残る4館は1977年（昭和52年）から翌年にかけて、新たなビルへと集約・改築されていきました。まず1977年12月にテアトル福井の新しい建物が竣工し、続いて1978年（昭和53年）7月には、ビッグ・アップル・ビレッジ内に松竹座とシネマプラザが開館しました。これにより、複数の映画館が現在のテアトルサンクの礎となる形へと統合されていったのです。

1990年代には、松竹座、テアトル福井、シネマプラザの3スクリーン体制でしたが、1999年（平成11年）12月17日、大規模な改装工事を経て、現在の5スクリーンを持つ映画館へと生まれ変わりました。このリニューアルに合わせて、名称も「テアトルサンク」と改められました。これを機に、それまで劇場ごとに特定の配給会社と契約する独立採算制を廃し、様々な会社の作品を自由に上映できるフリーブッキング制へと移行しました。これにより、ハリウッドの大作や話題作はもちろんのこと、それまで福井県内で上映機会が少なかった多様なジャンルの映画も観られるようになり、観客層の拡大に繋がりました。

デジタル化と地域との連携

2000年代に入ると、テアトルサンクはサービスの向上とデジタル化を積極的に推進します。2007年（平成19年）3月1日には、福井県内の映画館としては初めてとなる電子マネー決済サービス「iD」を導入しました。同年には特定のアニメ作品を集めたイベント上映や、地元で開催された原画展に連動した声優・クリエイターの対談イベントなども開催し、多角的な取り組みを展開しました。2009年（平成21年）には、話題作『アバター』の封切りに合わせて3Dデジタルシネマシステム（RealD）を導入。この流れを受けて、2011年（平成23年）秋までには全スクリーンがDLPによるデジタル上映へと移行しました。

また、地域文化への貢献も行っており、2015年（平成27年）からは毎年10月に開催される福井駅前短編映画祭の主要会場の一つとして利用されています。2016年（平成28年）の同映画祭では、テアトルサンクが独自に賞を設け、地域に根ざした映画文化の振興に寄与しています。

現在のテアトルサンクは、スクリーン1から3がテアトルビル内に、スクリーン4と5がアップルビル内に配置されています。各スクリーンへのアクセスは、テアトルビル内のスクリーン1・2へは階段で、スクリーン3へはエレベーターで、アップルビル内のスクリーン4・5へはそれぞれエレベーターを利用する形となっています。ビル1階にはアニメショップが入居しており、多様な文化の発信拠点としての顔も持っています。

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